すべてが猫になる

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堂場警部補の挑戦  (ねこ3.6匹)

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蒼井上鷹著。創元推理文庫

玄関のチャイムが鳴った時、まだ死体は寝袋に入れられ寝室の床の上に横たわっていた。液晶画面を見ると、緑色のジャージを着た若い男が映っていた。「おはようございます、ドーバです。電話でパントマイムのレッスンをお願いしていた―」招かれざる客の闖入により、すべてがややこしい方向へ転がり始める「堂場刑事の多難な休日」など、当代一のへそ曲がり作家による力作四編。 (裏表紙引用)


お仲間さんにはあまり人気がない作家さんだが、自分は運が良いのか今まで読んで来た作品がたまたま
そこそこの当たりだった。ので、この文庫書き下ろし小説を買ってみた次第。


なんとこれまた、「へそまがり」の名にふさわしい作品ではないか。
連作短編集というスタイルに慣れている読者ほど本書で作者が仕掛けたイタズラの意味が伝わりやすいだろう。一編目から違和感だらけだ。一見普通の短編と見せかけて、ひねくれた真相に着地する。このやり方ってうまいのだろうか?一話ごとのタイトルが「堂場警部補とこぼれたミルク」「堂場巡査部長最大の事件」「堂場刑事の多難な休日」と続く事でもわかるが、主人公が降格して行くのである。ちなみに時系列が降順になっているという単純な事とは違う。どうしてこういう事が起こるのかは読んでご確認を。


「他の作家がやらない」事をやっているのは間違いないのだが、個人的にはそのひねくれ感が本書一話一話の面白さを削いでいる気がした。ストレートにミステリが楽しみたい人には不向きだろう。第一話でのネタ割り、第二話の驚愕の展開と続いた時点で「このネタ、終了」となっている気がしなくもない。と言うのは、連作の命とも言うべき最終話が焼き直しにしか思えなかったから。もったいない。


しかし、蒼井さんのキャッチコピー考えた人って麻耶さんとか歌野さんとか読んだ事ないのかね?


(291P/読書所要時間2:30)