すべてが猫になる

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検死審問/Inquest (ねこ3.9匹)

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パーシヴァル・ワイルド著。創元推理文庫


リー・スローカム閣下が検死官としてはじめて担当することになったのは、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件だった。女主人の誕生日を祝うために集まっていた、個性的な関係者の証言から明らかになる真相とは?そして、検死官と陪審員が下した評決は?全編が検死審問の記録からなるユニークな構成が際立つ、乱歩やチャンドラーを魅了した才人ワイルドの代表作。 (裏表紙引用)


存在は知っていたのだが、タイトル的に自分向きではないようなかほりがしていたので避けていた作品。が、先日掲示板時代からのお友達・うささんが「面白かった!」と記事で紹介されていたのであっさり購入。付き合いの長い、好みが合う人の記事は特に参考にしやすいわさ。

で、読了。現代ミステリかと思っていたら、なんと1940年の作品だった。訳がいいのか、あまり古臭さは感じなかったのは自分が日本人だから?文化の違いと、時代の差の区別がつかない時がある。
そして構成がいい。検死審問自体馴染みがないのだけれど、証言や日記で構成されているため理解しやすい。時系列も正しいし、何よりそれぞれの容疑者の人間性が個性に富んでいる。検視官と陪審員の本音のやり取りなんてびっくりを通り越して引く。死体一体につき日当はいくらかなんて記述が出てきた時は正気か?と思った。裁判員裁判と違うところが色々あって、興味深かったな。



そういうメインから逸れたところが特に面白い上に、肝心の殺人事件もゆるさを見せない。被害者が「自分が自殺するわけがない」という遺書?を残す時点でおかしさ極まって爆発である。動機や犯行方法、誤誘導のあたりは特記するほどではないが、個人的には違和感なく読めた。人の裏の顔がうまく描けているんじゃないかな。

もちろん続編も読みます^^



(311P/読書所要時間2:30)