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天霧家事件  (ねこ3.6匹)

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太田忠司著。創元推理文庫

野上の探偵事務所を訪れた女性の依頼人は、ふたりの少年が写っている古い写真を見せ、ひとりは自分の亡夫だが、夫の昔のことを知りたいので横にいる人物を捜してほしいと言う。調査を始めた野上は女性に不審を抱き、喫茶店で会うものの、近くにいたのは野上だけという状況で女性は毒殺されてしまう。俊介には明かしたくないと野上が悩んだ事件の真相とは?シリーズ長編第5弾。 (裏表紙引用)


狩野俊介シリーズも遂に第5弾かー。徳間では何弾まで出ているのだろう?いつものような次回予告がなかったので、これでしばらくストップなんていやよ。

さて、前作がアキちゃんメインの事件だったのに続き、今作は野上さんメインのお話。俊介が美樹ちゃんと旅行に行ってしまったのですねー。でも、冒頭は俊介への語りかけとも言える手紙で始まっているし、
俊介にはまだ知って欲しくない陰惨な事件をどう語るか悩む野上さんに哀愁があって、俊介の存在が大きく感じられる。

今回の事件は、野上さんが容疑者に!野上さんの目の前で服毒死してしまった謎の女性。その女性の正体が明らかになるとともに、女性に依頼されていた少年の捜索に進展が。女性が死んでしまったために、女性と深い関係のある天霧という実業家に捜査を依頼された野上さん。いやいや、人間関係がやはりドロドロできもちわる。。主人の愛人の由紀子さんの儚い存在感が物語全体の雰囲気を作っているよう。

トリックには無理感があるものの、人間関係の重大な秘密がなかなかショッキングなもので面白かった。
が、やはり俊介メインが一番いいな。あのもろい身体と心で、意志の強さ、聡明さを伺わせる俊介のキャラクターがこのシリーズの命だな。

(289P/読書所要時間2:00)