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鬼面の研究  (ねこ3.8匹)

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栗本薫著。講談社文庫。

取材で訪ねた秘境・鬼家荘。嵐のために外界との連絡を断たれたロケ地で取材班が一人また一人と殺されていくーー。鬼の子孫を自称し伝説と因習に生きる住民と、やらせ精神あふれる現代の鬼っ子・テレビ人間の間に起こる連続殺人事件の謎に、名探偵伊集院大介と森カオルの名コンビが挑む傑作長編推理。(裏表紙引用)


『絃の聖域』が見つからないので、飛ばしました。リサーチ不足ではありませんったらありません。
今回の伊集院大介シリーズは、横溝正史世界の漂うクローズド・サークルもの+秘境伝説。昭和の淫靡な雰囲気に、栗本さんのナウでヤングな80’s感性がミックスされた独特のミステリーです。

ミステリー、キャラクター共に満足感いっぱい。
すっかり定番キャラとしてゆきあやの脳にインプットされた小説家の森カオルが、伊集院さんを頼って
仕事と事件と両面から支えられていますねー。完全に依存するのでなくて、カオルさんはカオルさんで、伊集院さんから一目置かれているのですね。

『ぼくが、なぜ、カオル君と一緒にいるととてもいいか知ってる?あなたは、とても敏感なレーダーのようなものなんです。(中略)あなたは、いろいろな雰囲気や、一座の中に異分子が混りこんでるとか、そこに歓迎されてるか、いないか、といった微妙なニュアンスを、無意識に肌で感じて、そしてそれをそっくり顔に出すんですよ。ーーそしてたいていの場合それは当たってる。』

いい台詞すぎて引用が長いですが、これを見抜く伊集院さんも素敵よねえ。

そして、伊集院さんは普段おとなしくて個性がないように見えるのだけど、彼の本領が発揮されるのはいつも謎解きシーンなのですよね。(探偵が謎解きシーンで輝くのは当然だけど、彼の場合、なんかそれが他の探偵達と違うんです)彼の高説はとても長いのだけど、淀みがなくて、人間の言動や行動の機微や物事の瑣末な事柄を一つ一つ疑って、その中にいるたった一つの悪の、その心から浄化させて行く。そんな感じ。

読めば読む程味が出る、伊集院大介。
もし自分が、後輩に「あねき監修・伊集院大介早わかりセット」を継承してもらうならコレも足したいなあ^^

                             (299P/読書所要時間2:30)