すべてが猫になる

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プラ・バロック  (ねこ3.6匹)

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結城充考著。光文社。

埋め立て地の冷凍コンテナから、14体の凍死体が発見された。整然と並んだ死体は、誰の、どんな意図によるものなのか?神奈川県警機動捜査隊に所属する女性刑事・クロハは、虚無感と異様な悪意の漂う事件の、深部に迫っていく…。圧倒的な構成力と、斬新なアイディアを評価され、選考委員満場一致で新人賞を受賞した期待の新鋭、渾身の一撃。第12回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。 (あらすじ引用)


あ~~~~。。。。。
お~~~~~。。。。。
う~~~~~~。。。。。
びみょう。。。。。

これ、警察小説として読まない方がいいです。
題材といい、文体といい、なんか既視感があるなあ、と思って読んでいましたが、これは森博嗣です。
センテンスが短く、改行を酷使し、事件が現代風で無機質なこの感じは森博嗣です。
登場人物の名前が全てカタカナで表記されているのも変わってますが、仮想空間という舞台と警察捜査を絡ませたこの作風は確かに独特で、受け入れられにくいと思う。雰囲気やあらすじからしても手に取る読者層は普通の社会派ミステリーを期待するタイプの読み手でしょうし、実は若向けな気がする。
無駄に登場人物を多くしていないし、主人公・クロハの姉が精神科医という設定も、女性警官・ハラの
「女であること」の差別を打ち出す展開も含めて余計な要素は全くない。ミステリーとしても破綻はしていないし、よく作ってあるとは思うのじゃが。。。

なんか腹が立つんでしょうね、キャラクターに^^;。
警察内部の腐敗を中途半端に描いているのがその要因だと思いますが、クロハも上司であるカガも中途半端な人間味しか見せていないので共感しづらい。これならいっそサイボーグみたいに徹底的に記号としての人間を描いた方が世界観が完成したのでは。集団自殺の心理も、言いたい事を言いっぱなしにしているので掘り下げたいのかただの色づけなのかがわからない。

しかし、なかなか面白い作家が登場したのではないかと思う。かなり読みやすかったし、自分はこういうのは嫌いじゃない。(次が出ても読まないが^^;)
作者履歴を見たら、電撃小説大賞銀賞と書いてあるので「ああ、やっぱり、なるほど」と思った。偏見かもしれないが、電撃系の土壌がある作家さんが社会派を描いたらこうなったという感じに納得。曽根さんの「沈底魚」と同じく、やっぱり餅は餅屋ってことじゃないかな、と思いました。まる。

                             (372P/読書所要時間3:00)