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あなたが名探偵  (ねこ3.7匹)

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泡坂妻夫西澤保彦小林泰三麻耶雄嵩法月綸太郎芦辺拓霞流一著。創元推理文庫

蚊取湖の氷上で発見された死体の首には、包帯が巻きつけられていた。前日に、病院で被害者の男性と遭遇した慶子と美那は、警察からあらぬ疑いをかけられて?。泡坂妻夫「蚊取湖殺人事件」をはじめ、西澤保彦小林泰三麻耶雄嵩法月綸太郎芦辺拓霞流一が贈る七つの挑戦状。問題編の記述から、見事に事件の真相を推理できますか?犯人当てミステリの醍醐味をあなたに。 (裏表紙引用)


あまりアンソロジーは読まないのですが、麻耶さんの未読作があったので読んでみました。
どれも犯人当ての形を取っており、読者への挑戦状が挿入されています。本格好きにはなかなかよだれものの作品集と言って良いでしょう。執筆陣もバラエティに富んでおります。自分としてはデンジャラスな作家さんが3名混じっておりますが、なるべくその偏見を出さないよう心がけ・・たつもりです^^;出来としては頭一つ抜きん出たものや駄作はなく、どれも一定レベルの水準のもので楽しめますよ~~~(と、逃げる)。

『蚊取湖殺人事件』泡坂妻夫
スキー場から臨む蚊取湖で起きた殺人事件に巻き込まれた2人の女性。
トリックもなかなかで、犯人当てとしても論理的ですね。動機についてはそこまでこだわらなくてもいいかな。文章もすみやかで、読みやすい。

『お弁当ぐるぐる』西澤保彦
タイトルの不安的中、ギャグを交えた刑事もの。西澤さんのユーモア系ってどうもキャラが芸人みたいで苦手。短編でもキャラを立たせようというプロ根性は凄いが。・・しかし、期待していなかったのが功を奏したのか、犯人の意外性や洗っていたお弁当箱の謎など、なかなか目を見張るものでしたよ。

『大きな森の小さな密室』小林泰三
田舎の金貸しのところへ様々な用件で同時に訪ねて来た男女。
登場していないのにこの金貸しの悪徳ぶりが伺えるし、男女の言い争いも雰囲気を高める上に動機を作れるし、行動の分散もよく考えられていて良いと思う。
トリックに一部「犯行後どうするつもりだったのか」という疑問が生じた点は否めないものの、感心出来る出来だったな。

『ヘリウスの神像』麻耶雄嵩
木更津悠也ものです。2004年執筆のものですから、「名探偵木更津悠也」の時期とかぶりますね。どうしてコレ入れなかったんだろ。
1ページ目の蘊蓄を目にして「麻耶さんまたやっちゃったの!?」と懸念いたしましたが、『気分は名探偵』収録作とは違い普通に読みやすい普通のミステリでしたよ。特に、解決編の木更津の推理は圧巻。エアコンのトリックについて可能かどうかは置いといて、一つ一つ論理的に事象を繋げて行って同時に犯人候補を消去して行く様はかっこいい。

『ゼウスの息子たち』法月綸太郎
もちろん法月綸太郎シリーズです。お父さんの出演はなし。
設定も変わり種を持って来たし、犯人の意外性も良し。若干、綸太郎の会話に若ぶったネタを持って来てるのが鼻につく。真相に至る双子推理のネタをそこから持って来ていいのかが若干疑問。

『読者よ欺かれておくれ』芦辺拓
森江春策シリーズです。
もちろんタイトルはカーの『読者よ欺かるるなかれ』のもじり。内容も意識している感じ。
結果としては、欺かれました^^よくある、までは行かなくてもたまに見るな、という仕掛けなのだけど、他の作家陣とは一風変わった手法を取っていて面白かった。

『左手でバーベキュー』霞流一
紅門さんという探偵はシリーズキャラでしょうか。あまり霞さん読まないので分かりません。
しかし、アンソロジートップランナーがベテラン作家でアンカーが霞さんというのは前もあったような^^;
リアリティは置いておいて、霞さんらしい面白いネタではないでしょうか。ギャグが控えめだったのは残念ですが、コミカルさは変わりません。ただ、人が死んでるのに最後の「お祝い」はないだろう。。


以上。
自分の感想だと作家の好悪がすこ~し入っているので、読者によって好みの作品はさまざまだと思います。「気分は名探偵」と違って、いい意味で意見が割れるんじゃないかな。読む価値はあると思うので、気が向いたらどぞ^^

                             (321P:読書所要時間3:30)