すべてが猫になる

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贖罪  (ねこ2.5匹)

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湊かなえ著。東京創元社

取り柄と言えるのはきれいな空気、夕方六時には「グリーンスリーブス」のメロディ。そんな穏やかな田舎町で起きた、惨たらしい美少女殺害事件。犯人と目される男の顔をどうしても思い出せない四人の少女たちに投げつけられた激情の言葉が、彼女たちの運命を大きく狂わせることになる?これで約束は、果たせたことになるのでしょうか?衝撃のベストセラー『告白』の著者が、悲劇の連鎖の中で「罪」と「贖罪」の意味を問う、迫真の連作ミステリ。本屋大賞受賞後第一作。 (あらすじ引用)


『告白』『少女』に続く、湊かなえさんの第3作目。
この作品については、作風のマンネリ化についてかなり厳しい書評が飛び回っております。自分はそもそも『告白』からして大絶賛したわけではないので、それほど大きな期待もせずに、普通に面白く読めればそれでいいと思っていました。こういう系統は嫌いではないので、今更ここに来て「もううんざり」という気持ちにはならないだろうと。

が。

うんざりでした。。。。

第一章、かつての少女達の一人が今の人生の破綻を「告白」するという衝撃的な出だし。一体誰に対しての告白なのか?判明しないまま、別のかつての少女へと語り手を変えて展開が進んで行きます。PTA総会で、女教師が保護者達に「告白」するという・・・。。ええ、勿論これ『告白』やん!と心の中で突っ込ませていただきました。
とにかく不愉快です。我が娘が何者かに殺され、たまたま難を逃れた娘の友人達に向かって罪を償え、と罵倒する母親が物凄い悪意と憎悪を持って登場します。その時点で相当作品への不信の芽が芽生えてしまったのですが、次々登場する少女達の母親もかなりの身勝手で子供っぽい人物として描かれているのです。次々と連鎖して起きる事件そのものがまた不快だったのもあり、読むのが嫌でたまらなくなって来ました。

これは個人的な意見ですが、理不尽な殺人や弱者をいたぶるもの全体を否定しているわけではありません。それを言うとミステリー自体が読み手にとっては全て野次馬的悪趣味な読み物になってしまう。このブログを続ける意義の一つとして、それは避けたいのです。この作品の場合要は、そこにいかなる社会的背景や、現代社会問題のアプローチが含まれているかということ。ただそのままを描き脚色するだけでは、無味乾燥な見せ物にしかならないのではないかと強く思いました。

内容は今までと同じなので感想は省かせてもらいます。(ひー)
しかし、最初から思ってはいたのだけど、こういう作家さんって本屋大賞とかそんなメジャーなものじゃなくて、もっとひっそりと(ホラーサスペンス大賞とかでカルト的人気を博すとか)、一部の人間だけが楽しむべき存在なんじゃないでしょうか。
リアリティを追求した社会派サスペンスでもないし、心理的ホラーミステリとも違うし、独特と言えば独特です。しかしその安定感のないまま、広いフィールドに出てしまうとこの内容では批判が出るのも当然でしょう。メッセージ性もない、リアルでない、読んだ後に「読ませる面白さ」しか残らないのであれば、読者がよそへ流れてしまっても仕方がないのではないでしょうか。一つ皮を剥けばノワール、ホラーなどマイナーなジャンルへの大きな導き役になる可能性も秘めているだけに、そろそろワンステップ欲しいものです。

                             (253P/読書所要時間2:00)