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閉店時間/Closing Time (ねこ4.2匹)

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ジャック・ケッチャム著。扶桑社ミステリー文庫。

9.11テロの傷痕残るニューヨーク。街では閉店間際のバーを狙った武装強盗が相次いでいた。バーテンダーのクレアは、恋に破れた哀しみを胸に抱えつつ今日も店に出る。自分を待ちうける運命も知らず…。未練を残して別れた恋人たちを襲う悪夢を描く、ブラム・ストーカー賞受賞の表題作をはじめ、意想外の結末へと読者を導く怒涛のサスペンス「ヒッチハイク」、傑作ノワール・ウエスタン「川を渡って」等、ケッチャム文学の最高峰を示す中篇四本を厳選して収録。加速する狂気に貴方はついていけるか。 (裏表紙引用)


ぎゃぼー
大昔『隣の家の少女』を読んだ日の悪夢がまだ覚めないまま、二度と読むまいと決意したはずのジャック・ケッチャム。読んでしまった。読んでしまったよ。。その悪夢の中篇集、そのすべての実態を一つずつここに。

閉店時間
閉店時間に合わせて強盗を重ねる極悪非道の犯人と出くわしたクレアの運命やいかに。
出だしの緊迫感と恐怖がさすが。どこをどう読んでも救いのない、さすがケッチャム^^;。この結末はこの作者ならではのもの。きっついなあ、そうだった、ケッチャムってこんな事書く作家だった、思い出した。まるで自身を痛めつけるために描いているような、混沌とした根暗な、絶望とだけ向き合った世界観。

ヒッチハイク
こちらを表題作にしても良かったように思う。
女性弁護士に降りかかったまさに地獄のような体験がここに。あの時、あの車にさえ乗らなければ。。
もういいだろう、これ以上書くなよ、と思う自分が脅されて無理矢理読まされて行くようなこの感覚。
真に壊れているのは誰なのか。あまりにもキツ過ぎる内容で相当に気分が悪い。しかし、この現実感はなんだろう。表題作と同じく、お話の繋がりが見事ではあるけれど。

『雑草』
レイプを趣味とするカップルが登場。はっきり言ってこんな作品を描いた作者の神経を疑う。少女達を次々と誘拐、監禁し、胸もよおすほどの性的虐待を重ね時には殺害する、そんな描写が延々と続く。このカップルにはまるで人としての感情がない。しかし、ケッチャムは描く。彼らの成れの果てと、心の闇を最後まで。この破壊していく様のリアリティは評価せずにはいられない。

『川を渡って』
なんと、ウエスタン・ヒーローもの。
今までの3編でたいがいぐったりとなっている自分に安息の時間はやって来なかった。作品集の中では唯一の勧善懲悪を土台にしたものなはずだけれど、ここまで底辺を奈落を味わわされて爽快な気分になるはずもなし。


ふぅ。。。
やはり凄い作家だった。手を出した事を後悔しつつ、それでもドキドキして読み通した自分に拍手。
でも、またいつか読むんだろうな。刺激が欲しいと言うと野暮ったいけれど、単に面白いものを求めているから裏切られないと信頼しているのだと思う。

どんなものでも文学として受け入れる姿勢があるという貪欲な方、ヘビーなものがお好きだという方にしか薦められません。読まれる場合は、かなりの覚悟で臨んで下さい。ケッチャムに比べたら他のホラー作品なんて豆腐です、豆腐。