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制服捜査  (ねこ3.9匹)

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佐々木譲著。新潮文庫

札幌の刑事だった川久保篤は、道警不祥事を受けた大異動により、志茂別駐在所に単身赴任してきた。十勝平野に所在する農村。ここでは重大犯罪など起きない、はずだった。だが、町の荒廃を宿す幾つかの事案に関わり、それが偽りであることを実感する。やがて、川久保は、十三年前、夏祭の夜に起きた少女失踪事件に、足を踏み入れてゆく―。警察小説に新たな地平を拓いた連作集。 (裏表紙引用)


ずっっと気になっていた佐々木譲さんの警察小説、初読みです。文庫出た文庫出た(ノ^^)ノ♪

なかなか読みやすくて、「隠蔽捜査」を思い出してしまいながら同じように熱中してしまう良い作品だったと思います。実は一話目を読み終わって、「短編集だったのか!」とそこで初めて気付いた事は黙っておきましょう^^;しかしその一話目がかなり重要で、川久保のおかした一つの過ちがこのお話全体の核となっています。道警の方針により長い間の同地勤務が出来ない、つまり地域の事が全くわからない状態で次々と新しい巡査が赴任して来る村。どうせまた川久保もいなくなるのだろう、と村の中では白い目を向けて来る者もいます。川久保はそれほど表面的には熱い正義感迸るといった性格ではないのですが、彼の淡々とした真面目さが読者に共感を呼び起こしますね。時々、上の者に「愚かな刑事」などといったキツい言葉を吐く一面もあり、ドキリとさせられます。

それぞれの村で起こる事件は、ほとんどが凶悪犯罪だとかそういった大規模なものではありません。犯罪率が一番低い村という事で、平穏な村に起きた問題を、川久保が懸命に独自で捜査をして行くのです。人口数千人の村ですから、全ての村民がお互いの顔と名前を知っていますし、些細な犯罪もすぐ露見し噂になってしまうという特色がこういう雰囲気を作り出したのでしょう。

しかし、そんなお話では実はなかったのですね。
それは読んで是非確かめていただきたいところ。割とシンプルな印象のある作風でしたが、警察小説臭さが少ないのでかえって万人に薦めやすい作品ではないでしょうか。佐々木さんの他の警察ものも是非読んでみます^^