すべてが猫になる

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紗央里ちゃんの家  (ねこ3.8匹)

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矢部嵩著。角川ホラー文庫

叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと聞かされた。小学5年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕は真っ赤に染まり、祖母のことも、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、叔母夫婦には何を聞いてもはぐらかされるばかり。洗面所の床からひからびた指の欠片を見つけた僕はこっそり捜索を始めたが…。新鋭が描いた恐ろしき「家族」の姿。第13回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作、待望の文庫化。 (裏表紙引用)


ほっほぅ。
角川ホラー何冊か仕入れたんだけど、しまった。一番いいやつから読んでしまったかも、と思える作品でした。タイトルだけでは題材が予想出来ず、あらすじだけ聞いてもそれほど斬新なストーリーではないように感じてしまう。文章はそれほどまだ良くはないのだけど、これわざとかな、わざとなんだろうな、と思える崩した日本語が雰囲気づくりと個性をうまく演出していた感じ。

展開自体は中盤まで平凡なのだけど、それをどう描くかによってこんなにも目新しく、怖くなるんだという見本のよう。実家で留守番をしている倒錯した姉との電話での会話や、一瞬だけ電話で出演した警察官のわけのわからない壊れ方も楽しい。「殺人自販機」って何だいおまわりさん^^;;
そうやってお話が脱線しながらも、本筋は破綻せず進んで行っているのも良いね。終盤に向かうにつれ意外にも残酷になって行ったのは衝撃的だったけれど、終始意味がわからないながらもきちんと纏まりを見せ、タイトルの持つイメージを殺さなかったのも好印象。

天才とか発想が超人並みとかそういうレベルではないのだけど、いい新人さんを見つけたと思います^^ホラーがお好きな方には大抵ウケるんじゃないかな、これ。


※一つだけ、もの凄い謎が。何故か32ページの10数行だけ、全ての漢字に振り仮名が入ってるんだけど。。何か意味があるのかな。。特にコレと言って普通の部分だったのだけど。