すべてが猫になる

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サクリファイス  (ねこ4.4匹)

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近藤史恵著。新潮社。

ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ―。二転三転する真相、リフレインし重きを増す主題、押し寄せる感動!自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。 (あらすじ引用)


うおおお!!(ノ><)ノ
これはいい!心臓がもうギュワッと来た!!

ロードレースという全く自分には馴染みのないジャンルでした。それゆえ、前半はこの世界の仕組みや一風変わったルールに戸惑いを覚えたのですが。アシスト役である主人公の白石の目を通してこの世界を見て、徐々に徐々にこのスポーツの美点やフェアの概念が心の中に浸透して参りました。チームワーク、先輩後輩という価値観が個人的には昔からあまり好きではないので(運動部恐怖症)どうなるやらと思いましたが、意外とこの作品、そこのところを淡々と描いています。どうやらこのチームのエースの人柄が影響しているという事で。エースとアシストという関係性、ドラマーの自分にはそれほど違和感は感じません。別に自分がスターになりたいわけじゃなし、かと言って自分が認めた相手としか共存したくない。かつ、自分は自分の為にやっている。

しかしこの作品で自分が一目置いた部分というのは、彼らそれぞれの思惑や気持ちが全て個人に対して向けられたものである、という事です。二転三転する終盤の真相も、実は心理的な要素がミステリーとして論理を展開させて行く、というのも好み。この中にある価値観、誰かにわかる必要もないんじゃない?これってそれが狙いでしょ。

一つ余計だなあ、と思って苦々しく読んでいたのは、白石の元彼女。こいつ何回出て来るねん^^;;
年月を考えればこの恋愛の数は一般的かもしれないけど、読者にとってはこの部分だけ切り取って登場するわけだし、普通に尻軽女みたいな印象しか抱けないぞ^^;白石も、ちょっと別れた女に執着し過ぎですよね。基本的には彼の「自信のあるようなことはひとつも言わないくせに、本番になるとさらっとなんでもこなすんだ。そして、それで誉められたとしても、困ったような顔をするばかりで、少しも自慢しないんだと」という人柄を気に入って読んでいたのでねえ。汚点が一つ残った感じ。

いやあ、それにしても良かった^^期待以上です。