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海上タクシー<ガル3号>備忘録  (ねこ3.8匹)

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多島斗志之著。創元推理文庫

16ノットで1時間、これで尾道に着くことはできますか。瀬戸内で海上タクシーを営む寺田のもとに、殺人事件の容疑者が主張するアリバイを崩すべく、刑事が知恵を借りにきた。容疑者は熟練の同業者。寺田は物理的に不可能な壁を破れるか。驚愕のアリバイ崩し『見えないロープ』ほか、海上タクシー<ガル3号>船長の寺田と助手の弓が遭遇する7つの事件を収録。『二島縁起』姉妹編。(裏表紙引用)


うひょ、大当たり!
割と有名な作家さんですが、初めての挑戦です。なんとなく自分の好みではない気がして手を出してなかった多島さんなのだけど、しら菊ねえさんが最近精力的に多島さんに挑戦されているのを知り(しかも大好評のようす)加えて創元推理文庫で出ている作品があるというなら試す価値あり、とおそれながらというよりはワクワク感を胸に楽しく読了する事が出来ました~♪

海洋ミステリーというのは手を出した事のないジャンルでしたが、もっとバリバリ専門的なのかと思いきや文章がびっくりするほどスマートで読みやすい、それでいてこの設定が持つ必要最低限の状況説明がサラリとスルリと描かれ雰囲気も抜群。海上タクシーって存在も知らなかったけど、読んでいると自分も寺田や弓さんと一緒に「一時の方角から対抗船発見!」とか「レーダー反応しません!凄い霧です!」とか言いながら冒険している気分に(死ぬぞ^^;)なっていました。

意外だった事、すなわち自分のツボにはまった一番の要素というのが、キャラクターが薄い、という事がまず挙げられます。普通は逆になるもんですが、船長の寺田と助手の弓さんの造詣があまりにも個性を抑えられ、それがまた雰囲気に凄く生きているのです。背景を詳しく描かない分、彼らの過去や人生に想いを馳せる事が出来そう、という効果も。さらに、ミステリ的に凄く地味(笑)。基本的には誘拐事件や心中疑惑などなどの事件が関わってくるのですが、颯爽と事件を解決するでもなく、あくまで仕事はお客を目的地まで安全に運ぶ事だという船長のスタイルがこのそれぞれの短編をすっきりと大人っぽいものにしています。

結構変わってるかも、これ^^。もう一冊長編買ってあるので楽しみだあ。