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姉飼  (ねこ3.8匹)

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遠藤徹著。角川ホラー文庫

さぞ、いい声で鳴くんだろうねぇ、君の姉は―。蚊吸豚による、村の繁栄を祝う脂祭りの夜。小学生の僕は縁日で、からだを串刺しにされ、伸び放題の髪と爪を振り回しながら凶暴にうめき叫ぶ「姉」を見る。どうにかして、「姉」を手に入れたい…。僕は烈しい執着にとりつかれてゆく。「選考委員への挑戦か!?」と、選考会で物議を醸した日本ホラー小説大賞受賞作「姉飼」はじめ四篇を収録した、カルトホラーの怪作短篇集。 (裏表紙引用)



ぎえっ、久々に地雷本に当たってしまった。というのが読み始めてすぐの気持ち。
表題作の『姉飼』がどれほどショックだったか、それはもうおぞましさに肌が寒気立ちそれでもドアの隙間から覗き見たい欲求を抑えられないぐらい。加虐ものは苦手なんだよー、と言いながらも人間の本能のツボを衝いて来るこのいけない悦び。串刺しにされた”姉”を買った者はその欲望を抑えられない。
・・と、設定は100点満点なのに展開とそのオチが少しお粗末。こういうのが一番がっかりする。これが「女飼」ではなくて「姉飼」だからこそ意味不明で恐ろしいのになあ。ラストも不条理で通して欲しかった。

『キューブ・ガールズ』も設定の勝利。世の中に氾濫するのはネットで注文して購入するインスタントの”彼女”。届けばお風呂で戻し、そこには男性の理想とする女性が立っている。自身がインスタントだと言う自覚のない女性が、恋人にその事実を打ち明けられ・・という展開。ラストの残酷さといい、好みは別としてこちらの方が完成度は上かも。

『ジャングル・ジム』
ジャングルジムを擬人化したお話。彼は毎日、やって来る様々な年代、職業の人間達の悩み相談を受けている。。
もう少しタイトル工夫して欲しかったな。この作品は大変読後感が悪い上に受け入れられないタイプのものだけれど、小話としてのまとめは上手い。
『妹の島』これはまあ、普通^^;虫ものはかんべん。

とにかくどれもなんとも言えない後味の悪さ。アイデアは突き抜けているのだから、どうせならとことん行く所まで行って欲しかった、と全ての作品で思いました。この物足りなさが他の作品も他の作品もと読みたくさせられる要因の一つなのかな。