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ハーメルンに哭く笛  (ねこ3.8匹)

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藤木稟著。徳間文庫。

昭和十年、九月。上野下町界隈から、児童三十名が忽然と姿を消した。翌々日ーー。僧侶寛永は墓地で草刈りの最中、視界に奇妙な影をとらえる。こんなところにお地蔵様が?不審に思い進むと、それは……。びっしりと蝿にたかられた死体……子供の死体だった!魔都を跳梁する謎の笛吹き男の目的は?怪文書「自壊のオベリスク」の真意は?探偵・朱雀十五の活躍を描く、文庫改訂新版、シリーズ第二弾!(裏表紙引用)


はいはい、朱雀シリーズどんどん行きますよ~。(その割に期間空いたな。。)
この時代がかった雰囲気と禍々しい事件の様相を気に入っておりましたが、今回も期待に違わず。むしろ前作よりその不気味さは際立っています。三十人の子供を誘拐し死体をバラバラにしたその手段と目的、そして謎の笛吹き男の正体とは。それだけでもお腹いっぱいになる展開ですが、柏木が取材や捜査の一貫で立ち寄る見世物小屋や、息子を事故で失い精神が壊れてしまった田中の造詣など、背筋の寒くなる内容がてんこもりではありませんか。さらにトラック運転手が目撃した謎の”上半身男”や、木の上に座る死体などなど、ネタは引きも切れずやって参ります。

そのこんがらがった事件を全て解決に導くのがわれらの朱雀十五。いやあ、今回も彼の性格の悪さが際立っていますよ^^;他人をからかうのが生き甲斐なのかなこのひと^^;いやしかし、言ってる事はいつも正しいのだから仕方ありません。彼の祖父の名が十三というのも笑ってしまいますね。
全てを論理的に推理する朱雀は見事としか言いようがありません。ある意味バカミスですが力ずくのトリックと世相を表した悲しい時代背景がいい味を出して、バカな部分だけが浮き立って印象に残っていないのがかえって良かったですね。

それにしても柏木君は悲恋の人ですね。元気で登場していたので安心していたのですが、またまた。。
しかし、前作より読後感はすこぶる良いです。朱雀の手による小憎らしくも温かいラストは感動的でした。