すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

【新釈】走れメロス  (ねこ3.6匹)

イメージ 1

森見登美彦著。祥伝社

あの名作が、京の都に甦る!?暴走する恋と友情――若き文士・森見登美彦近代文学リミックス集!その時、彼の腕を通りすがりの女性が必死で掴み、「ちょっとすいません!」と叫んだ。思わず見返した相手は驚くほどに可憐な乙女であり、目に涙を溜めている。芽野は決して女性に腕を掴まれたぐらいでのぼせ上がるような人間ではないけれども、理由を聞く前から彼女の涙にもらい泣きしていた。(「走れメロス」より)異様なテンションで京都の街を突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意(リスペクト)が切なさと笑いをさそう、五つの傑作短編。 山月記/薮の中/走れメロス桜の森の満開の下/百物語を収録。 (あらすじ引用)


古典のオマージュ作品ということで「どうだろかな~~」と思っていましたが、いきなり冒頭の「山月記」から森見ワールド全開。やっぱりどうしてもどれも大学生なんですね^^;実は、原典をはっきり覚えているのは「走れメロス」だけなもんで(山、桜、百は読んだ事もない)こいつは失敗したなあ、と思ったのが正直なところです。なんとな~く、原典に文体も似せてあるんだろうなというのはわかるのだけど「これだけでも楽しめる」という判断は別として、原典を踏まえてから読むべき作品でした。
どうしてそう思ったかというと、「走れメロス」の新解釈がそうだと思ったからです。友情、猜疑心というテーマだけは微動だにしない、モリミーならではの「わははは世界」(色気むんむんの桃色ブリーフだけでノックダウン^^;)。大事な部分を壊さずに独自の世界を切り開き、しかもちゃんと面白いというのが才能を見せつけてくれましたね。
これなら、他の作品も同じようにダブルで楽しめたんじゃないか。

ただ、普通の感覚で”好き”なのは「山月記」でした。怪奇ぽくて哀しげで結末にきちんと深みがある。
「メロス」については、やっぱり原典が好きです^^;子供心に殴り合うシーンが衝撃的でしたし、教科書に載っている作品や課題図書の中で心からパンチをくらった唯一の作品でしたから。