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陀吉尼の紡ぐ糸  (ねこ3.8匹)

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藤木稟著。徳間文庫。

昭和九年浅草、吉原・弁財天。神隠しの因縁まつわる古木「触れずの銀杏」の側に、ぐったりと座る老人の姿があった。しかし……、様子がどこか変だ。顔がこちらを向いているのに、同時に背中もこちらを向いている。つまり、顔が表裏逆さまについているのだ!そして老人の手が、ゆらりと動く。まるで手招きをするように……。盲目の探偵・朱雀十五、初見参。(裏表紙引用)


べるさん、早速読んだよー^^v
文庫がことごとく絶版だったので(><、)借りて来ました。徳間文庫ということで少し引きつつ、もしや八雲みたいな軽いノリのものではないかと恐れつつも挑戦。(だってサブタイトルが『探偵SUZAKUシリーズ1』なんだもん。カッコイイなおい^^;)でも表紙が萌え萌えしたものではなかったので良かったかな。

怪奇的な雰囲気がかなり強く、百物語や神隠しなど異界ものでは必須の要素がふんだんに。この時代の静けさや引き立つ物音(衣擦れの音から息遣いなどなども)が綺麗に表現されています。
とにかく朱雀のキャラクターを楽しみにしていたので、いざ登場シーンが巡って来ると「ひゅーひゅー」と言いたい気分でした(なかなか出て来なかったのよ)。普通ではない、性格を如実に表した彼のやり方も作者のテクニックを感じさせますねえ。吉原自衛組織・車組率いる盲目の頭という派手な設定と、麗人かと見まごう中性的なルックスに反して、性格がとことん悪いという(笑)。朱雀の言う事のほとんどが嘘ってなんだそれは^^;

怪奇路線で突っ走って行くのかと思いきや、殺人トリックや遺体消失の謎など、なかなか正統派の論理を使っていて面白い。かといって雰囲気を損ねる事もなく、この時代ならではの悲劇や現実性すらも怪奇と距離を置く事なく世界観を確固たるものにしています。
しかし、事件と大きく絡む事になったある人物の悲恋には胸が苦しくなりますね。ここまで残酷な展開になるとは思っていなかったので驚きです。冷静に読むと朱雀の言葉を借りて「無茶を承知の物語」ですが、爆発とか雷とかそういう事ではなく、怪奇ものと恋愛ドラマは派手な方がいいです。

いや~、気に入っちゃったなあ。ブッ○オフで続編探して来ようかな^^
べるさんありがと~^^v