すべてが猫になる

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今夜は眠れない  (ねこ3.5匹)

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宮部みゆき著。中公文庫。

サッカー少年の僕と両親、平凡なはずの一家に突如暗雲が。「放浪の相場師」と呼ばれた男が、母さんに五億円を遺贈したのだ。お隣さんや同級生の態度が変わり、見知らぬ人からの嫌がらせが殺到、男と母さんの関係を疑う父さんは家出ーー相場師はなぜ母さんに大金を遺したのか?壊れかけた家族の絆を取り戻すため、僕は親友で将棋部のエースの島崎と、真相究明に乗り出した……。古川タクの描き下ろしパラパラマンガも収録。(裏表紙引用)


またしてもジュブナイル
家族の絆をテーマにしている点はそれらしいが、浮気とかお金の柵とかやってる事はかなりダーク。ユーモアミステリと書いている所もあったのだが、雅男の語りや島崎君のキャラは愛くるしく笑えるものの、内容はとても”楽しめる””泣ける”ものではなかった。

このお父さん、大嫌いだ。
ラストで熱い活躍が見られ、ここが泣かせるシーンなのだという冷静な判断は出来るがそこまでが酷かった。浮気の果てに、妻への猜疑心が募り子供の前でそれを爆発させ、自らが子供のように愛人の家へ飛び出して行く。中学生の子供がいるからには10年以上連れ添って来た相手のはずだ。暴力で発散しないだけの理性は持ち合わせているようだが、これだけの経験を踏まえ、さらにここまでの状況に陥らなければ信頼関係を取り戻せない男というのは一体どうなんだ。
しかし、誰かが欠けて深まる絆もあれば、困難を乗り越えて掴む絆もある。現実に目を据えて強く生きて行けというメッセージをここから発しているのであれば、こういうお話があってもまた良きかな。