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学生街の殺人  (ねこ4.3匹)

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東野圭吾著。講談社文庫。

学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して……。第二の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開してゆく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実!(裏表紙引用)


評判のいい本って絶対面白いんだな~。師匠とよもさんに大好評の(範囲がせまい)本書、ついに読了。東野さんの初期青春ミステリにはあまりいいイメージがなかったのだけど(「魔球」以外)、これは「青春」という分類だけに当て嵌めたくない出来の傑作だと思う。大学の正門の場所が変わってから
さびれてしまった学生街で暮らす若者たちと、この街に対する愛着を捨てられない大人達。その中で起きた連続殺人事件。初期作品にしては長編なので「どうしてだろう」と思いつつ真相解明編までは普通に読んでいたのだが、これはラストが特に凄い。エレベーター密室(状況)殺人のトリックも被害者の心理も、事件に関係する人々の隠された謎も、全て結びついてしまうのが圧巻。

やりたい事を見つけられない若者の姿をありのまま描いている小説は他にもあるし、それを少し遠い目で観察してしまう点は他と変化がないかもしれない。しかし、答えを見つけられずもがきながらも、最終的に彼らが「時間はいっぱいあるんだ」「若いことは恥ずかしい事じゃない」と確固たるまなざしで未来と現在を見つめるくだりにはショックを受けた。別に今の自分に大きな不満があるわけでもないが、もう一花くらい咲かせたいかもしれない。30を越えると恥ずかしい事だって若い頃よりはたくさんあるのだ。青春ミステリが好みでないのはそのあたりにも理由があるのだろうか。

余談だけど、「ピエロ」と名のつく喫茶店が出て来たぞよ。。