すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

天使はモップを持って  (ねこ3.9匹)

イメージ 1

近藤史恵著。文春文庫。


深く刺さった、小さな棘のような悪意が、平和なオフィスに8つの事件をひきおこす。社会人一年生の
大介にはさっぱり犯人の見当がつかないのだがーー「歩いたあとには、1ミクロンの塵も落ちていない」
という掃除の天才、そして、とても掃除スタッフには見えないほどお洒落な女の子・キリコが鋭い
洞察力で真相をぴたりと当てる。(裏表紙引用)



おおっ。このシリーズ、今まで読んだ近藤作品の中で一番いいんじゃないですか。
魔女をイメージさせる”キリコ”という名前もハマっているし、ほうきの代わりにモップというのが
いいですね。しかも、掃除スタッフという仕事柄、人に見えないものが見えてしまう、という
特性も探偵としてはまり役です。
まあ、比喩としても1ミクロンの塵も……は有り得ませんが^^;

人間の些細な悪意などの感情がゴミ箱には溢れているのでしょうね。キリコはそんな人間関係の
トラブルまでも掃除しちゃいます。キャラクター造形のひとつとして、キリコは渋谷に歩いていそうな
ギャルのような格好をしています。清掃会社の身だしなみの規律は厳しいと思うので現実味がないのと、
それを差し引いてもヒールやミニスカートでは仕事の能率は明らかに下がるはずなのですが^^;
こんな中規模のビルに一人しか派遣していないというのも、仕事の能力を認められているからか
人件費を割いているのか、、、う~ん。こういうとこ突っ込むのはやはりおばちゃんかな。。
それが物語を楽しむ上でのマイナスになったわけではないです。

この作品集は、若手男性社員が語り手でありながらも、一度でもOLを経験した事のある方なら
「うんうん、わかるぅ~」と共感を得やすいものではないでしょうか。
こんなに会社はえげつなくない、これは小説だからねえ、と思われそうですが、実際これよりも
嫌らしい人間関係が世間一般の会社内にはあるのですけどね。。
連作らしく、最終話ではお約束のサプライズも用意されていて、ミステリ的にはなかなか
楽しめるのでは。

キリコちゃんの仕事に対するプライドも好感度高かったです。仕事に貴賤はない、と言いますが、
もしこれがもっと人が憧れるような職種だったらこういう効果は発揮出来なかったんだろうな、と
思います。こういうところは近藤さんはうまいですね^^
しかし、読後無性に掃除がしたくなる本だったな。。。