すべてが猫になる

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フライ、ダディ、フライ  (ねこ4.2匹)

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金城一紀著。角川書店


大手家電メーカー経理部部長・鈴木一47歳。東京生まれ東京育ちの平凡なサラリーマン。
繰り返しの平凡な毎日、会社と家との往復。そんな半径1メートルの中で生きて来た彼の身に
突然異変が起こる。一人娘の遥が、ボクサーの高校生に暴力を受け重傷を負ってしまった。
反省の色のない少年に復讐を。娘の為に一介のパパが立ち上がった。



作家のお名前だけはもちろん知っていたが、本屋で手に取る事もなく、正直言えば気になって
いなかった作家さん。先日べるさんのところで金城さんの新刊が絶賛を持って紹介されていて、
例のごとく影響されやすいゆきあやが立ち上がった。紹介されていたのは本書ではなかったが、
なんとなく「作家」として褒められている印象だったのでまあコレでもいいかな、と。
当の新刊は予約が凄いし未読の作家さんを買うのは勇気がいる^^;借りました。。


告白すると、実は本書の前に一冊買って(文庫)読みました。『GO』というやつ。。
文体、雰囲気、ストーリー共に大変好みではありましたが、1、2カ所どうしても譲れない
合わない要素を発見してしまい(しかもラストで)、記事にしにくかったのです。


それを踏まえて、では、感想を。

元々文体や作風は好みである為か、プロローグでもう光るものを感じました。
ていうか、こないだの主人公が狸だと思ったら今度はおっさんですよ、おっさん^^;;;
このおっさんが大変情けない(体力、気力共に)おっさんなので、正直イライラするんですよ、
最初はね。歯向かって行くけどすぐ逃げるし、大声出すけど雰囲気に呑まれるし^^;
まあ、その情けないおっさんがある不良高校生グループの助けを借りて特訓し、ボクサー
高校生との対決を目指す、というストーリーなのですが。

そんなめちゃくちゃ奇抜な展開でもなく、腹を抱えるほど笑えるわけでもないのに、
凄く感情移入出来てしまうんだなあ。元々の性格は変わってないし、所詮付け焼き刃だから
都合のいい結果はなかなか出せないのだけど、それが哀れでもあるし、感動でもある。
ただ、前に述べたように二冊読んでみて、おいらはこの作家さんとは決定的に合わない要素が
やっぱりあります。『GO』で感じたのは性的な表現について。うまく表現出来ませんが、
金城作品には明るさが不足しているように感じます。それが二作に共通する在日朝鮮人
存在と無関係ではない、と思うのですが。これが世界観なのであり魅力、特徴なのでしょう。
自分と地続きではない世界だと思って読んでしまいます。
それとは関係なく、不良グループが加勢する心理も、バスのスタメン達のあのシーンも、
有り得るかなこれ?と思うくだりに突然入ってしまうのが厄介でした。自分が凄く楽しんで
読める「OKゾーン」と、冷めてしまう「NGゾーン」がちょいちょい切り替わってしまうという。。

そういうわけで、おいらの性格上評価を決定づけるのは「ラストシーン」であるからして、
その「OKゾーン」で終わってくれればとりあえず満足出来るのです。

結果はねこ点でおわかりだと思いますが^^。
元々、文章センスが良い方なので常道のストーリーでも個性が出ます。
でも、「ここをこうしてここはこうしてくれれば」が多い作家さんなので、好きになるかは
微妙なところですかね。