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アナン、  (ねこ4.2匹)

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飯田譲治梓河人著。講談社文庫。


東京に初雪が降った夜、高級料亭のゴミ置き場に、生まれたばかりの赤ん坊が捨てられていた。
その子を発見したのは、流という名の記憶喪失のホームレスだった。拾われた赤ん坊は「アナン」と
名付けられ、流と仲間たちによって育てられる。やがて、アナンの周囲で不思議な現象が次々と
起こるようになるーー。(裏表紙引用)




読んでいた上下巻本はコレでした。推理して下さってた方々ごめんね。当たるわけがない^^;

文庫で約900ページの大作です。スピリチュアル・ファンタジーという事で(なんだ?^^;)
自分にはあまり馴染みのないタイプの物語でした。ホームレスに拾われた捨て子の「アナン」が
神秘的な力を持ち、誰もが彼に自分の心の内を話さずにはいられない、そしてその後アナンの
身体から青い色の物体が出現するという設定です。一種の超能力ですね。
総合してまとめると、守るべき家族を得たホームレスの再生物語と、血の繋がらない父と子の
愛情物語ですね。


泣けた………………(T_T)
うお~……………………(T_T)



流と仲間たちが必死でアナンを守り育てようとする上巻の方が面白いのですが、アナンが
成長して行き、モザイク制作者として成功して行く下巻も読みどころが沢山あります。
過去に現在に傷持つ二人にはたくさんの障害と、人生を変える出会いが待ち受けています。
ファンタジーながら意外と現実的な面も合わせ持っており、彼ら二人や数々の登場人物が
吐露する衝撃的な人生には重みがあります。自分なら、アナンに癒してもらいたいとは
思わないけど。。再生は信じる。けれど、過去を消す事は出来ないからです。封印する事が
救いにはならない事は物語が証明してくれています。芸術に癒しや真実を求める事は
否定しませんが。

実は、自分が期待していたラストシーンでありながら、少々物足りなさの漂う作品でした。
それが「もっと彼らの物語の先を読みたい」という気持ちからか、ただの燃焼不足かは
わかりませんが。読んでいる最中はもっと点数上に行くと思ってたぐらいだし。

それでも、この13年にも及ぶ長大な物語を忘れる事は出来ません。
自分は読み捨てられていくよりも、あのシーンこのシーンが至るところで繋がり、
最後に意味を深めて行くものが好き。(あ、だからミステリーが好きなのか?^^;)
読んでいる自分にも長かったけれど、読後余韻に浸った後物語の出だしに戻ってみると
また別の感慨が生まれます。そうだった。この泣かせる親子、最初はゼロから始まったんだ。