今邑彩著。光文社文庫。
三鷹で起こった、自殺らしき女性の墜落死と、中野で起きた殴殺事件は、同時刻に起きた。そして、
墜落死を目撃した少女がいた。飛び降り直後は密室だった女性の部屋に、男がいたことを少女が
証言したことから、警察は同一人物の犯行と見なす。犯人は瞬間移動したのか?少女に迫る魔手…。
衝撃の密室トリック!本格推理にサスペンスを加味した傑作!(裏表紙引用)
積んでいたぐらいだから、つまりは「あまり期待していなかった」事になるだろうか。
そんな本が意外にも面白ければ損したような得したような複雑な気分になります。
「密室が売りのミステリ」という事はサブタイトルを見ればわかるように、この作品の一番の
読みどころはそこ。このトリックはうまく盲点をついており、数々の証言者や協力者が
捜査に混乱をきたす役割か、解決の取っ掛かりとなる存在かを上手く見きわめる事が肝要でしょう。
主人公である貴島という刑事はじめ、各々キャラクターの掘り下げが出来ています。それが
物語の面白さに繋がっている事は間違いありません。
しかし、自分にはそれが裏目に出てしまったところも。
伏線の隠し方にはさりげないものと堂々とさらすものと大きく分けて二種類あると思うのですが、
本作では「隠しきれていない」という読者が一番ピンと来やすいレベル。自分はカンで犯人を
当てる事はあっても確信を持ってそれを指摘出来る事は少ない。そんなわたくしが見抜いて
しまったのだからちょっと残念な作品。
ラストのこのオチもいらなかったなあ。この流れは作者の特徴なんだろうけども。