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女王国の城  (ねこ3.9匹)

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有栖川有栖著。東京創元社


舞台は、急成長の途上にある宗教団体<人類協会>の聖地、神倉。大学に顔を見せない部長を案じて、
推理小説研究会の後輩アリスは江神二郎の下宿を訪れる。室内には神倉へ向かったと思しき痕跡。
様子を見に行こうと考えたアリスにマリアがそして就職活動中の望月、織田も同調、四人はレンタカー
を駆って木曽路をひた走る。外界との接触を阻まれ囚われの身となった一行は決死の脱出と真相
究明を試みるが、その間にも事件は続発し……。15年7ヶ月ぶり、江神シリーズ待望の第4弾。
(あらすじ引用)



ハードカバー二段組500ページ。


読めた事が。

満足です^^;


病気療養中にせっせせっせと1週間かけてあせらずに読んだので、「早く終わらんかい」とか
「長いぞこら」という気分にはなりませんでした。「重いぞこら」とは思いましたが。
蘊蓄も想像してた程ではなかったし。こういう文章に差し掛かった時は、「本題に関係なし」
というアンテナが自然と伸びるので気を抜いて字をささっと追うのが良し。
引用されていたカミュの不気味な作品(「城」でしたか?)を読んでみたくなったり、
椎茸の丸焼きが食べたくなったりと悪い事ばかりではありませんでした。

宗教団体が絡む本格ミステリは不気味度が増す上に「隔離」という状況に違和感をそれほど
感じないからそれが良かった。もう少し、団体側の登場人物に個性が欲しかったけど。
カリスマ的な何かとか(その可能性のあった人物はアレだったし)。別に吹雪さんとか
由良さんに仮面を被ってて欲しかったわけじゃないけど。
べるさんのアイドル江神さんがもしかして宗教にかぶれてしまったのか!?と疑って
ハラハラしてしまう序盤も良かったし、追いかけるアリス達の気持ちが痛いほど伝わって
来ました。手紙を交換するくだりも本格ミステリの常道でたいへん良い。
途中、チームに分かれての脱出劇のあたりが一番自分的には盛り上がって読んだかも。
警察を呼ばない理由も、彼らを城から頑なに出さないあたりも真相が楽しみで楽しみで^^。


肝心の謎解きの感想はと言うと、うん、まあ、なかなか^^;。
恒例の『読者への挑戦状』がなんだか弱気だったのが腰砕けだったけれど。
関係者を一堂に集めて、探偵が一席ぶつ解決編は久々にドキドキしました。
推理に何の瑕疵もないと自分は思うし、消去法で犯人を名指す展開は一番好きなのです^^。
ただですね、肝心の犯人の名前を聞いても、その時にあまり驚きはなかったのが残念~。
「そうだと思っていた」とかではなくてね、ほら、やっぱ個性が欲しいのよね。
そういえば、クリスティとかだと容疑者全員に「強固なアリバイ」と、「強い動機」が
あったじゃない。動機を推理するべき作品かもしれないけれど、「え~っ、あんただったの!?
いい人だと思ってたのにぃ」とかいう盛り上がりが自分は欲しかったのかな。
あと、不満は『ペリハ』。まあ、クイーンの申し子だからこんなもんかなとはいつも
思ってはいるのだけど。。。
花火とアレの関係も良かった。なるほどね~。。だから犯人はこんな七面倒くさいことを。。。


ネタバレになるので伏せながらですが、クイーンの作品で本作を彷彿とさせるものがありますよね。
あの名作ならば、(本書の凶器の問題の真相部分について)○○である必然性が条件を提示される
たびに「なるほど!」としか言えなくなったもんですが。こちらの場合、同じ事を言っていても
それが全部こじつけというか説得力に欠けたのが残念でした。○○だから仕方なかったのでしょう、
では納得しづらい。

で、ラスト。「警察を呼べない理由」

ほほ~~~~う。ほほほ~~~ぅ。ある意味単純、しかし。。。

ちょっと、明るく終わり過ぎじゃないかな^^;;;駆け足、って感じで終わった気がする。

アリスとマリアの関係は良かったけど。


と、それで思い出したけど、江神さんが神倉に来た理由がちょっとおいらわかってないような
気がします^^;いえ、書いてあったんですけどなんか自分の知らない事があるような^^;
もしかして、以前オムニバスに入っていた短編読んでた方が良かったのかな。。