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メルカトルと美袋のための殺人  (ねこ4.3匹)

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麻耶雄嵩著。集英社文庫

 

推理作家の美袋三条は、知人の別荘で出会った佑美子に刹那的に恋をする。しかし彼女は間もなく死体で発見され、美袋が第一容疑者とされてしまった! 事件に巻き込まれやすい美袋と、「解決できない事件など存在しない」と豪語する魔性の名探偵・メルカトル鮎が挑む巧緻な謎の数々。脱出不能な密室殺人から、関係者全員にアリバイが成立する不可能犯罪まで――奇才が放つ、衝撃本格推理集。(裏表紙引用)

 

メルカトル鮎シリーズ、初の短篇集。時系列ではこれが一番最初なのかな?名前だけは出てきていた、メルのワトソン役美袋がメイン。

 

「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」

招かれたある別荘で知り合った女性に恋をし、一晩で夜を共にした美袋。しかしその晩、女性は書斎の密室で銃で頭を撃った状態で発見される。リビングでは別荘の持ち主の男が殴殺されており、女性は男を殺したあと自殺したと思われるが…。とにかく美袋が可哀想すぎるお話。メルの推理した、美袋の目撃したものが〇だったというのは…口が開いてしまうね。それを上回る衝撃だったのがそのあとのメルの探偵にあるまじき行動。それ犯罪ですよね。。さらに傷心の美袋の傷口に塩を塗るメルであった。。

 

「化粧した男の冒険」

ペンションに招かれた美袋とメル。そのペンションで1人の男が部屋で刺殺されてしまう。予定がキャンセルになったからと遺体に唾を吐きかけるメル…。正統派の推理ものだけど、本当にこれが真相なのか疑わしいオチ。メルならやりかねん。。

 

「小人居為不善」

自分は長編に向かない探偵だと嘯くメル。暇にあかせて「身辺に危険を感じる方調査します」というチラシを配ってしまう。やがて事務所を訪ねてきた老人は、身内に命を狙われていると話すが…。事務所内で事件が起き、解決してしまうメル。ホームズ的。

 

「水難」

旅館へ原稿を書きにやって来た美袋と同伴のメル。壁に消えた女子中学生の謎を追う。うーん、本当に幽霊を設定に生かしてしまうとは。。昔の事件とつなぎ合わせる推理。蔵にわざわざ書かれた「死」の文字、その行動理由がなるほどと思えた。しかし心霊探偵物部太郎を騙るメル…刑事に手柄を渡さないという幼稚な理由で隠蔽、ああメルらしい。そりゃ美袋も殺意抱くわ。

 

ノスタルジア

メルが描いた犯人当て小説。美袋は従兄弟のために推理できるか。メルの小説、読みにくいったらない。。雪の密室殺人は面白いが、論理はめちゃくちゃ。これじゃ美袋も怒るわ。。S&Mシリーズによく似た話あったなあ。

 

「彷徨える美袋」

路地裏で後頭部を殴られ意識を失った美袋。山小屋で意識が戻ったものの、命からがらペンションへたどり着いた。大学時代の友人・大黒から送りつけられたシガレットケースが原因なのか?新たに起きた殺人事件。トリックや犯人などは正攻法だが、美袋を殴った犯人が鬼畜すぎる。。これはビックリしすぎて覚えてたもんなあ。。

 

「シベリア急行西へ」

シベリア急行の旅へ出かけたメルと美袋。大作家先生が銃殺された部屋に労されたトリック暴きが複雑でなかなか凄い。オリエント急行殺人事件を彷彿とさせる。外国を舞台にしたのも合ってるし。オチの動機もブラックでありリアルでもあり。

 

以上。

すぐに事件を解決してしまうメルカトルは確かに短篇向けかも。しかし警官にクロロホルムを嗅がせるわ事件を私的理由で隠蔽するわ、メルカトルらしさ全開。美袋も結構毒あるし、メンタル強くないと読めないやつ。この時期の麻耶ワールドはほんとに強烈だなあ。