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地球儀のスライス (ねこ4.2匹)

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森博嗣著。講談社文庫。

「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ2編を含む、趣向を凝らした10作を収録。『まどろみ消去』に続く第2短篇集。(裏表紙引用)
21.5.21再読書き直し。
 
初読のあまりの点数の低さにビックリ。ちゃんと読んでなかったんだろうな。。内容はとてもレベルが高くて森さんらしくて、第一弾を凌ぐ出来。
 
「小鳥の恩返し」
父の病院を引き継いだ医者は、かつての恋人とヨリを戻し結婚する。父は病室で患者に殺され、病室には犯人が持ち込んだと思われる小鳥が残されていた。妻がその小鳥を飼い始めるもやがて逃げられてしまう。そして現れた新人看護師に医者は惹かれ始め…。
ミステリーとファンタジーの融合かと思ったら、きっちりとミステリーだった。妻は一体どういう人だったんだろう。一度別れた時に心の隙間が生じてしまったか。
 
「片方のピアス」
大学助手のトオルと交際しているカオルだが、ある日トオルの双子の兄弟サトルを紹介されてから、サトルと惹かれ合ってしまう。しかしトオルが韓国にいる間、サトルのアパートが全焼してしまうが…。
果たして生き残ったのはどっち?双子の片割れに惹かれてしまうというのは、外見だけでない何かが共通しているのだろうか。表面的な違いはサトルの演技?
 
「素敵な日記」
自殺願望のある青年の日記を手に入れた男をはじめとして、持ち主が死ぬとまた次の持ち主が死んで、の繰り返し。ちょっとSF入ってるのかな。森ワールドという感じの真相。
 
「僕に似た人」
小学生男児の視点だけどひらがな書きじゃないから読みやすい。引っ越して来たマンションの上に住んでいた「まあ君」と、まあ君のお母さんとの出会い。人は似ていても違う。
 
「石塔の屋根飾り」
S&Мシリーズ。萌絵のマンションで開かれるパーティーに、犀川さん、喜多さん、国枝先生が招待された。(叔父叔母つき)犀川さんが用意した石塔の屋根飾りの謎にみんなで挑戦する。
あまり興味引かれない内容だったので流し読みしつつ。結局はラストの諏訪野さんがカッコイイっていう話。
 
マン島の蒸気鉄道」
萌絵って、マン島に別荘とか普通に持ってるから凄い。。。犀川さん、喜多さん、大御坊さん、萌絵の叔母さん登場。スリーレッグスの謎に挑む。
これも引かれない内容で流し読み。まあ、犀川さんにベタベタする萌絵を楽しむ話。
 
「有限要素魔法」
記憶のあやふやな男、拳銃で頭を撃ち抜いた男、そばにいた女。幻想小説?でどういう話かよく分からないが、雰囲気を楽しむ。
 
「河童」
生まれ育った村に婚約者と戻って来た男。様変わりした村の様子を見て、かつて親しくしていた男を思い出す。手首を切ったエピソードがちょっと怖い。これも幻想的でよく分からないがなんだか惹かれるお話。
 
「気さくなお人形、19歳」
Vシリーズ。小鳥遊練無&香具山紫子が登場。れんちゃんがメイン。お金持ちの老人に雇われたれんちゃんの物語。結構切ない系だが、れんちゃんがカワイイ、ひたすらカワイイ。そういう話。苑子さんの息子さんが〇〇ってコメント見たのだが、まったく覚えていないのでこれからシリーズ読む時意識しておこう。
 
「僕は秋子に借りがある」
大学で知り合った秋子。天真爛漫で奇矯な言動の秋子を最初は疎ましく思っていたが…。タイトルの意味が最後にわかる仕掛け。切ないなあ、またふたり会えないかなあ。。お互いに何も悪くないじゃんね。
 
以上。
バラエティに富んでいながらどこか統一感のある森博嗣らしい作品集。最初の2編と最後の2編が特にお気に入りに。