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月の影 影の海 <十二国記> (ねこ3.8匹)

小野不由美著。講談社文庫。

八方美人で優等生の平凡な女子高生、陽子は、学校に現れた謎の男に強引に連れ出される。
辿り着いた先は、地図にない巧国という国。その国で陽子は「海客」と呼ばれる禍をもたらす
お尋ね者となる。自分を連れて来た「タイホ」と呼ばれた男も行方を眩ましていた。
陽子は姿形が変貌し、授けられた剣と、取り憑いた「ジョウユウ」だけを共に一人
追っ手から逃げ回り、元の世界へ戻る為に闘う事となる。裏切りと孤独の中、陽子は
半獣の少年、楽俊と出会うがーーー。


おもろいやんかー(笑)。
これって完全ファンタジーですね。懐かしい香りのするドキドキする冒険譚。
本作は物語の序章、という感じ。陽子が何者なのか、どうして十二国へやって来る事に
なったのか、そして自分を連れ出した男は誰なのか、十二国とは何か。

現実世界では(そう書くと本編がキャラにとって「幻想」という事になっちゃいますが^^;)
優等生でありつつも主張がなく人格形成が発展途上、といった感じの陽子が、
この十二国の中でいかに成長し、どんな人生を送るのか。度重なる裏切りの末、
過去の(現在とも言える)自分を見つめどう変化して行くのか。

出会った人間達が騙した事と、自分の人格には関係がないと描かれたくだりが印象に残った。
自身を「莫迦」と言えるのは騙された事ではなく、一度二度の受動的な経験で
自分のアイデンティティが揺らぎ、影響を受けてしまう事に対しての自分の至らなさであると、
纏めると自分はこう解釈した。ほんの数日で波瀾万丈の経験をしてしまったのだから
若いみそらで可哀想に、と感じつつもまさか陽子も以前の自分に戻りたくはないだろう。
それでいて、実は1人ぼっちだった事を知った後でありながら「今の自分ならやり直せる」
から戻りたい、と言った陽子に拍手だ。私なら怖くて元の世界で膝を抱えるか、
この異世界で闘う勇気もなく自滅するだろう。

物語としてはこれから、という感触だが、この薄い文庫本2冊でここまで地についた
内容なら文句ない。少々マンガっぽいのが照れくさいが、次作が楽しみな本がまた増えた^^v。
みなさんありがとう。

追伸。タイホ。ジョウユウ。楽俊。誰に萌えようか検討中。

追伸2。 2冊の画像めんどくさ…ごほごほ、手間なので手抜きです。すいません^^;。