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私が殺した少女 (ねこ3匹)

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原りょう著。ハヤカワ文庫。第102回直木賞受賞作。

私立探偵の沢崎は、豊島区で起きた誘拐事件にひょんな事から関わってしまい、犯人グループの
共犯の疑いをかけられる。誘拐されたのは邸宅の9歳の少女。身代金の運搬役に指名された
沢崎は、犯人に翻弄され取引を失敗させてしまった。少女はどうなったのか。犯人の目的はーー?


かなり以前から気になっていた作家の一人ではあったが、「いつか、いつか」でやっと読了。
42歳でデビュー、前職はジャズピアニストという異色の経歴を持つハードボイルド作家。
寡作のようだが、発表作は必ず何らかのランキングに登場して来た模様で、さてどれほどの
実力を持つカリスマ作家かと期待しまくりで胸が破裂しそう。

出だしはOK。依頼人の家へ訪問するなり主人公が誘拐犯扱い、というインパクトと、
文体のクールさと洒落た筆致。ダンディズム漂う主人公の立ち位置。満点である。

しかし。
別に何がどう悪かったわけでもないが、それほど面白さを感じなくなってそのまま終わった。
最後のどんでん返しはあまりにも唐突だろう。
もう少し主人公サイドの推理に至るまでの「読者への焦らし」が必要ではなかったか。
タイトルの意味深さ、その技巧に感心しただけに、それが大きなマイナス要素となってしまった。
主人公に個人的に惹かれるような魅力を感じなかったのも影響しているかもしれないが。
期待していただけに、返す返すも残念。少なくとも、自分がハードボイルドというジャンルを
苦手としている事はこの感想に関係はない。