すべてが猫になる

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秘密機関 /The Secret Adversary (ねこ3.8匹)

陸軍中尉であったトミーと元看護士のタペンスは幼なじみ。不況の財政危機の中、二人は偶然地下鉄で
再会した。お金と退屈な日常の脱退を求めて、ひょんな事から二人は「青年冒険家商会」という名で
新聞に記事を掲載しようと試みる。しかし、その実行前にカフェで二人の話を聞いていた男から
おかしな仕事を依頼されてーー。


クリスティ長編2作目はなんとポアロでもマープルでもなくこの「おしどり探偵」、トミーとタペンス
シリーズ。「オリエント急行の殺人」「カリブ海の秘密」などのヒットを飛ばした、
人気2大探偵ばかりがもてはやされていてはいけない、このトミーとタペンス、ユニークな2人の
素人冒険家が活躍する作品群も良作が揃っているので見過ごしにして欲しくない。

当シリーズ、短編集を含んで5冊刊行と少ない。個人的には本書と短編集「おしどり探偵」と
「NかMか」あたりがおすすめ。このシリーズがポアロやマープルと違って面白い所は、2人が
作品と共に加齢して行くという点。本書では結婚どころか交際すらしていなかった2人(20代前半)が、最後の「運命の裏木戸」では70代で登場するから驚き。
実はわたくし、初読当時はなんと逆に読んでいた。だから、読めば読む程2人が若くなって行くので
特に本書はべっくらした。自分のトミーとタペンスのイメージは、おてんばなおばあちゃんに
翻弄されるお人好しおじいちゃん、だったのだから。

で、本書。
今読むとかなり展開が強引で、陳腐さが笑いを誘う。が、面白さは変わらなかった。最後の
どんでん返しはまるで初読のように驚いてしまった^^;。歳だろうか。。
タペンスの奔放さとあけっぴろげな素直さと、行動力。そして、口では蓮っ葉で要領のいい女を
演じながらも実は駆け引きが下手で、根は損得も欲望もないロマンスを求めている。
振り回されているのはトミーのようでいて、しっかり手綱を掴んでいるこのカップルは
本当に愛らしい。
今でもタペンスは私の理想。
最後の台詞は照れ隠しか?強くて照れ屋で不器用で、本当に彼女は可愛い女性だと思う(*^^*)。