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ちーちゃんは悠久の向こう (ねこ3.6匹)

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日日日(あきら)著。新風舎文庫。

高校生の「ぼく」の親友、「ちーちゃん」こと歌島千草は、クラスメイトでぼくの隣に住んでいる。
ちーちゃんは幽霊が大好きで、毎日ぼくは振り回されてばかり。ぼくの「平穏な日常」は
ちーちゃんがいて、学校に通って、家では仲の悪い両親に毎日虐待を受けている。そんな状態。
だけどある怪異事件を境に、ちーちゃんはある能力を身につけてしまった。平穏な日常が
壊れ始めるーーーー。


なるほど、これは完全に乙一だ。
噂には聞いていたが、これじゃモロだ。文体。世界観。語り口。どこをとってもそれらしい。
誤解されなきよう、批判はしていない。自分はどちらかと言えば好きな作家の二番煎じを
受け入れる方だ。
好きな文体、好きな展開。全く好みでないオリジナルよりはこちらを選ぶ、というだけだが、
自分はその「ポスト○○」のはみ出した部分に個性を感じて、別口として頭の中のお気に入りに
カテゴライズする。便利な性格。間違っても書評家にはなれない。

それはともかく、意外にも面白かった。
虐待、暴力、「キレる若者」。本書も相当凄まじい現実が子供に突きつけられている。
だんだん麻痺して来たのか、衝撃はなかったが実力は感じる。もし日日日乙一より先に出ていても
恐らく印象は同じである。乙一ならば、17歳という点以外の要素でも驚きがあったが、
本書は17歳がコレを!?という驚きである。乙一よりは現実に即した世界であり、
「暴走、破壊」させずそれなりの着地を見せたのはさすが。
不満はあるものの。
小手先で書ける仕上がりではない、日日日は小説を書き込んでいる。
乙一はもうほっておいても大丈夫そうだが、彼はまだ、この作品世界を正当に評価される
土台が出来ていないかもしれない。ライトノベルでおさまるにはもったいない。
佐藤友哉と手をつないで、文学畑でのびのびと活躍してもらいたいもんだなあ。。