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RIKO ー女神の永遠ー (ねこ4.2匹)

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柴田よしき著。角川文庫。第15回横溝正史賞受賞作。

新宿署の女性刑事・村上緑子のチームは、ビデオ店から恐ろしい犯罪映像を押収した。
映っていたのは、男性が男性を犯す残虐な輪姦シーン。さらに、被害者の男子が連続して
不可解な死を遂げている。
一方、緑子は職場の男性関係で辛い過去があり、警察内でもよからぬ噂をたてられ複雑な
位置にいた。悠然と立ち向かう緑子。捜査を開始するが、事件は意外な展開を見せる。



キターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
なんという衝撃。思わぬ世界観。うまくはないが絶妙の文章センス。本人も意外、
まさかのメガヒット。
歪んだ性犯罪、女性の主人公、同性愛。本来、あらすじをなぞっただけでは
一番自分が嫌悪するタイプのものではあるのですが、畏れていた捜査主流の、男性上位の
職場で強気にたくましく闊歩するありがちな「刑事小説」ではなかった。

主人公、緑子の性癖と異常な過去がまず異質で、それがこの文学的な行間とモノローグを
多用した世界観に見事な交わりを見せる。緑子の性癖は決して褒められた性質のものではないし、
理解するには程遠い判断力を備えていて決して魅力的な人間像とは言えない。
はっきり言えば好きではない。
しかし、自分に緑子と同じあるいは同等の悲惨な経験、望まぬ状況に立つという経験が
ないのであれば、彼女の人格を責める立場にはおれないだろうと思う。

ミステリーとしては、登場人物の少なさが(可能性としての選択肢の少なさ)それが
「意外な犯人」を導き出すには容易だったかも。書き込まれた主要人物がほとんど
警察関係の人間であるから、それ以外に被害者、加害者側の人間をもっと書き込むべきだったか。


とりあえず私は本書を読んですぐに続編を探しに行った。(なかったけど)
柴田氏は作品数が膨大で、思わずうれしい悲鳴を挙げたがシリーズものも多そう。
作品によって雰囲気も作風もジャンルも様々な印象なので、現時点ではファンになったとまでは
公言しないでおきましょう。読むぞぅ。がんばるぞぅ。