すべてが猫になる

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ねむりねずみ (ねこ2匹)

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近藤史恵著。創元推理文庫

妖艶に繰り広げられる歌舞伎の世界。
第一幕は歌舞伎役者中村銀弥が、「言葉が頭から消えて行く」という
原因不明の症状を訴える。妻である一子は、自らの不貞に後ろめたさを感じながらも
夫を気遣う。
第二幕は上演中の劇場、客席で起きた殺人事件。葉月屋の婚約者が刺殺体で発見される。
探偵の今泉は友人である役者の小菊と捜査を開始するがーー。


歌舞伎世界に精通していた方が楽しめる要素は増えただろうとは思いますが、
素人が読むのに支障はなく、読みやすく分かりやすいという実は困難であろう
文章で惹き付けられます。
女性作家ならではの、女性は聖女ではなく打算があり嫉妬がありうぬぼれがある、という
男性作家では見られない細かな心理が上手に描けていますね。
第一幕では個人的に文章と物語に吸引力を感じ、身を乗り出す勢いでした。

が。ミステリとしての魅力には乏しかったです。
この真相を独特の奇想と感じるという機能が自分には付いておらず、
完全に理解の範疇から外れている世界観だったのが残念です。


そして、一子という女性のしたたかさは独立心の薄弱さに通じる感があり、
クライマックスには抵抗を感じました。

この選択に、明るい未来があるだろうか?
流され、状況を変えるだけで得られるものはあるだろうか?
これがこのシリーズの作風なのだろうか。自分には辛いかもしれない。