すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

嫌われ松子の一生 (ねこ4.3匹)

イメージ 1

山田宗樹著。幻冬舎文庫

30年前。国語教師だった川尻松子は、ある事件をきっかけに解雇された。
それから風俗嬢、ドラッグ、刑務所とエリート人生から転落していく松子の
波瀾万丈の人生。
現在、50代となった松子が他殺体で発見される。松子を殺したのはだれか?
松子の存在すら知らずにいた甥が、アパートの整理をきっかけに伯母の怒濤の人生を
辿ってゆくーー。


映画化もされ、今話題となっていますね。どなたか観に行かれるのでしょうか。


読みやすい文章の為、上下巻を数時間で読了しました。
とにかく、面白いのは確か。
主人公である松子さんは、もう嫌になるほど浅はかで、短絡的で、直情型な女性です。
元々の転落のきっかけとなった盗難事件も、まともな常識を備えた人間の取る行動、心理
ではないし、修学旅行の下見で起きた事件は気の毒だとは思うけれどそれとこれとは
関連性がない。その後の転落の人生、選択の全てを思慮が浅いといわず何と言えばいいのでしょう。
全く同情の余地なし、読みながら常にイライラしてしまうだけでした。

不幸な人生を歩む物語で、時に「明日は我が身」という切り込み方がありますが、
これは絶対違う。自分なら、いや大抵の人間は99%そうしない。
はなっから自業自得としか言えない。家庭環境などを鑑みても。

元々、こういう悲惨な人生を描いた「だけ」の小説は好きではありません。
と言うのは本作を貶めているのではなく、自分の中の醜い部分と向き合わされるからです。
列車事故現場の見物に行く、不幸に遭った友人の噂話をする、普段そういう人間を
横目で冷たく見ている自分が本当の自分だと思っていたい。
こういう物語で発生する感情は、決して「共感」ではなく、「同情」でもない。
「哀れみ」。
「松子さん!もうやめてくれ!」と心で叫び、泣きながら閉じてしまった事も2度ありました。

自分が救われたのは、最初あれほど蔑んでいた松子さんという女性が、
間違いながらもどんな境遇にいてもガッツを見せ、目標を持ち、その場その場の恋人に流されながらも
まっすぐに愛し、全力で生きている姿に気付くことができたから。

だからこそ、こんな結末は望んでなかった。
これでは一体、松子さんの人生は何だったのか。悔しいと思う一方で、
もうこうなるしかなかったのかもしれないとも思う。

松子さん、私は貴女を嫌いではなかったです。