大石圭著。角川ホラー文庫。
映画化されたホラービデオの、ノベライズ版が本作です。(ややこしい)
不幸な人生を歩んで来た伽椰子だが、やっと自分を愛する男性に巡り合え、
幸せな結婚をする。やがて長男が生まれ、平和な日々が続いていた。
しかし、ふとした事から夫に子供は自分の子ではないと指摘され、
理不尽な責めを受ける。
なぜ、自分だけがこんなに不幸な運命なのかと伽椰子は夫や初恋の男性や
世間までもを憎悪しながら死んでしまう。
やがて歳月が流れ伽椰子の住んだ家には次々と新しい家族がやって来るが、
その全ての人々は不審な死を遂げていた。
そしてーーー。
なんだか、このまま全ストーリーまるごとこのノリで書いてしまいそうになりました。
ノベライズは仕方ありませんが、あらすじ本にほぼ近いので。
読んで感じた事は、とにかく映像で恐怖を与える作品なんだろうなということ。
あらすじの参考にするために、今、本が横にありますが
表紙が怖いのでさっき裏向けましたもん。。
ストーリーにしっかりとした軸があった「リング」や、
空想力で人間の心理を文字だけで描き切る貴志氏に比べると
圧倒的に見劣りがするのは、
あくまで本作は視覚的な要素に重点をおいたものだからなのでしょうか。
はっきりとした主人公が明確でなく、次々と登場人物が現れ、読者の視点が
変わって行くので「小説力」に乏しい。
明らかに、「人間の憎悪」「深層心理の恐怖」という道具が揃いぶみしているのに
呪いが呪いだけに終始し、人間を描きそこなった感じ。
乗り越えるもの、到達するもの、なんらかの感動を与えるもの、
読んで得るべき何かが必要だったのではないでしょうか。
しかし、ストーリーを読ませ、手に汗を握らせる分には不足はなく、
お化け屋敷に入る動機のような欲求を満たせる上では満点。
展開も早く飽きさせない、ジェットコースター的なエンターテイメント作品としては
十二分に時間を取るに値します。