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弟切草 (ねこ3匹)

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長坂秀佳著。角川ホラー文庫


本作は1999年に発売された話題のゲームソフト「弟切草・蘇生編」をモチーフに、
同作家が新たなオリジナル小説化したものです。


ゲームデザイナーの公平と、恋人の奈美はお互いに誰にも言えない恐ろしい秘密を
抱えながら、ドライブに繰り出した。そこで、得体の知れない「弟切草」の怨念に
導かれてある洋館に辿り着く。そこは、まるで公平が作り出したゲームそのものの
世界だったーーーー。


公平と奈美と、それぞれの視点で進む物語。
公平の視点で書かれた事象の後に、また奈美の視点で同じシーンが繰り返される
仕掛けです。
彼がこう考えて、こう行動した時に、彼女はこう感じていた、という事が読者に
説明されるわけです。

中盤までは展開がぽんぽんと進み惹き込まれるのですが、何と言っても洋館という
閉鎖空間とそれぞれの回想のみで進行するのでちょっと飽きてくるかな?
ナオミという怨霊?が仮想的に登場し、モノローグでさらに存在が明確になった頃に
再びストーリーは加速して行きます。
この、ナオミというお化け?がすいませんが面白いんですよ。
カラ回りしてて。お化け+変態という感じです。
怖いはずが、どうしても笑えてしまいました。


シナリオライターという職業柄か、
小説としてはかなり痛々しいものがあるものの、
クライマックスとラストを論理的に、感動的に収束させていたのは○でした。
古いと言えば古いのですが、それなりの技巧を感じます。

しかし、好みで言うとこれはアウト。
登場人物の言葉使いが今風というのか、、、
「あの事故パニックだろ。どんどんキモチがコワくなってたんだ」
とか。。他にも、誤植だと思いたいような言葉使いが多々ありましてですね。。
入り込むのに邪魔になったのは事実です。

そして、あとがきの「乱歩賞作家」という肩書きに腰を抜かしたのでありました。