すべてが猫になる

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汝、星のごとく  (ねこ4.2匹)

凪良ゆう著。講談社

ーーわたしは愛する男のために人生を誤りたい。 風光明媚な瀬戸内の島に育った高校生の暁海(あきみ)と、自由奔放な母の恋愛に振り回され島に転校してきた櫂(かい)。 ともに心に孤独と欠落を抱えた二人は、惹かれ合い、すれ違い、そして成長していく。 生きることの自由さと不自由さを描き続けてきた著者が紡ぐ、ひとつではない愛の物語。 ーーまともな人間なんてものは幻想だ。俺たちは自らを生きるしかない。(紹介文引用)
 
「流浪の月」が良かったので、評判の良いこちらも。
 
共に毒親のもと育ち、瀬戸内の島で運命的な出会いをした暁海と櫂。2人はお互いの足りないものを補うかのように深く愛し合うが、年月と共に心がすれ違ってゆく――。親から貰えて当然のものを貰えなかった2人が、立場や境遇の変化とともにうまくいかなくなっていく心情が交互に描かれ、何度も胸が引き裂かれるような思いがした。漫画原作者として東京で大成功し、平凡で地味な恋人を無意識に見下すようになってしまう櫂と、底辺が故に地に足のついていない櫂の醜さが見えてしまう暁海。どちらの言い分も感情も「あるある」だからこそ、本人のせいではない災厄、不幸に引きずられていく様がやりきれなかった。
 
正しさなんてものの危うさ、世間や大人の身勝手さ、ドン底にいたからこその「誤った判断」、それを間違っていると誰が言えるだろう?。過ちや回り道を繰り返しながらもお互いを求め続ける2人の姿は不格好でも、欠落した彼らだからこその有り様、美しさだった。花火のシーンのラストは何度も読み返してしまったほどの名文。
 
「流浪の月」と同じく、主要人物の行動や言動にイライラすることも多々(櫂の「4万返せない?」は読後引きずるぐらい腹が立った)。凪良さんは見たくないものを見せてくる作家なんだろうな。ちょっと読み通すのがキツいな、、と思ってしまっていたけれど、こんなに感動出来るなら読破できて良かった。