すべてが猫になる

ヤフーブログからお引越し。

復讐の協奏曲  (ねこ4匹)

中山七里著。講談社

三十年前に少女を惨殺した過去を持つ弁護士・御子柴礼司。 事務所に〈この国のジャスティス〉と名乗る者の呼びかけに応じた八百人以上からの懲戒請求書が届く。 処理に忙殺されるなか事務員の洋子は、外資コンサルタント・知原と夕食をともに。 翌朝、知原は遺体で見つかり、凶器に残った指紋から洋子が殺人容疑で逮捕された。 弁護人を引き受けた御子柴は、洋子が自身と同じ地域出身であることを知り…….。(紹介文引用)
 
御子柴礼司シリーズ第5弾。
 
前回の裁判で、自分が幼女殺害事件の犯人であることを世間に公表する形となった御子柴。そんな人間が弁護士だなんて許せない、とあるブログ主の扇動によって800人を超える懲戒請求が送られてくる。ブログ主の無知あるいは嘘によって、住所や名前を記しても弁護士本人に知られることはないと勘違いした「正義の民衆」が、1人1人名誉毀損で訴えられたあとの阿鼻叫喚図が面白い。どうしていい大人が騙されてしまうのか、歪んだ正義感とは何かを訴えかけてくる今作。
 
さらに良き事務員・洋子が殺人事件の容疑者として拘留されてしまう。そして御子柴を襲う謎の人物が現れるなどしてますます事態は複雑化。一体これをどうやっていつものようにまとめていくのかハラハラ。いつもより裁判シーンが短く、洋子の正体や思惑、犯人の解明などがあっさりしていてちょっと食い足りないかな。過程が読ませるものだったのでなおさら。一つ一つは意外性があり悪いものではなかったので、もっともっと長く読ませて欲しかった。このシリーズ本当に好きだからね。