すべてが猫になる

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罪の轍  (ねこ3.7匹)

奥田英朗著。新潮文庫

昭和三十八年十月、東京浅草で男児誘拐事件が発生。日本は震撼した。警視庁捜査一課の若手刑事、落合昌夫は、近隣に現れた北国訛りの青年が気になって仕方なかった。一刻も早い解決を目指す警察はやがて致命的な失態を演じる。憔悴する父母。公開された肉声。鉄道に残された〝鍵〟。凍りつくような孤独と逮捕にかける熱情が青い火花を散らす──。ミステリ史にその名を刻む、犯罪・捜査小説。(裏表紙引用)
 
や、やっと終わった…。800ページ超えの奥田さんの大長編、4、5日かけてようよう読み終わりました。。辛かった。。
 
旧作「オリンピックの身代金」と同じく、戦後の昭和のお話。このへんの時代を描くのがお得意なのかな?ザ・昭和の時代背景がいい感じに出ていたと思う。本作の舞台は昭和38年の、オリンピックが開催される前年。礼文島で宇野寛治という漁師が仲間に騙され、窃盗の末船で流され、誰もが寛治は死んだと思われる、、というプロローグから始まる。生還した寛治は東京で暮らし始めるも、空き巣を繰り返す。やがて盗みに入った時計商の家で主人の他殺死体が発見される。容疑は寛治に向かうが――。そして浅草で発生した男児誘拐事件でも寛治の関与が疑われる。
 
誘拐事件が起きるまで300ページもある。。(途中、あらすじと内容が違う??と思って誤植を疑っていた)最初に発生した時計商殺しは寛治の仕業ではないと読者にわかっているのであまりハラハラしない。真相に推理やサプライズがあるわけでもないので中盤であっさり結着、なんだか肩すかし。前半はヤクザが大きく関わって寛治やその周りの人々との繋がりや動きが描かれている感じ、後半から誘拐事件の捜査に軸が移って刑事たちの奔走が長々長々~と描かれる。
 
いや、まあ、寛治にも色々助けてくれる人がいたり暗い過去が判明したり、刑事サイドも皆個性があって人情もあるので読みどころはあるのだけど。刑事ものの特徴として、ヤクザとの癒着や縄張り争いは切っても切れないのか、あまりそういう読み物が好きではない自分としてはちょっとウンザリ。その流れのまま、真相に驚きがあまりにもなさすぎるという驚き。え、うそでしょ、長々と読まされてコレで終わるの、と脱力。。。寛治のことは本当に生まれたところが悪かったと思うし同情の余地はあるのだけど、それでも罪は罪だから可哀想とも思わない。それを「考えさせられる」の極地まで高めてくれていれば感想は違ったかも。なんか怖いだけの人になってる。とにかく長かった、それだけ。感想あっさ。でも、新年1冊めコレにしなくて良かったわん^^;