すべてが猫になる

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屑の結晶  (ねこ3.5匹)

まさきとしか著。光文社文庫

女性二人を殺したとして逮捕された小野宮楠生。逮捕後「誰を殺そうと俺の自由だろ」と開き直る供述をし、身柄送検時には報道陣にピースサインをして大騒動となった。この「小野宮楠生を救う会」から依頼され弁護を 引き受けることになった宮原貴子は、小野宮と接しているうちに独特の違和感を覚える。違和感の根源は何か、そして、小野宮は女性二人を殺した真犯人なのか――。総毛立つラストが待つ傑作、待望の文庫化!(裏表紙引用)
 
まさきさんの文庫新刊。
 
交際相手とビルの清掃員を殺害したとして逮捕された小野宮の弁護をすることになった貴子は、小野宮と接見するうちに強烈な違和感を覚える。交際相手を殺害したことは認めるが、清掃員の女性は殺害していないと言うのだ。そして小野宮の交際相手たちの話から、温厚な小野宮が「カッとなって人を殺した」という動機に疑問を感じる。貴子は独自に小野宮の過去を調べ始めるが――。
 
う~ん。登場人物が全員クズで、それはまあまさきさんの作風だからいいのだけど。あまりにも言動が短絡的すぎないか、みなさん。取り巻きの吉永さんなんて異常者みたいに描き方されているし、出てくる親がとにかく全員底辺中の底辺。貴子自体、毒親に育てられてどこか屈折しているし。
 
小野宮自身は「誰を殺そうと俺の自由」発言をしたり報道陣にピースサインをしたり、まともに話が通じる相手ではなさそうと思っていたのだが、、過去を掘り起こすうち、これならこういう悪魔が育っても仕方がないと思えたし、愚かなだけで彼自身は純粋なところもあったんだろう。しかし屑と屑が煮詰まって屑の結晶になりました、という可哀想なお話以上のものはなかったな~という気がする。もうちょっといつもみたいな深みが欲しかったな。ひたすら不快だっただけ。一気読みできる面白さだけはある。