すべてが猫になる

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いけないⅡ  (ねこ4.2匹)

道尾秀介著。文藝春秋

大きな話題を読んだ”体験型ミステリー”第2弾。――すべての謎がつながっていく。前作を凌ぐ、驚愕のラストが待つ! 各話の最終ページにしかけられたトリックも、いよいよ鮮やかです。(紹介文引用)
 
最後のページに掲載された「写真」が全ての解答を指し示すという体験型ミステリー第2弾。この手法自体は他の作家さんで体験したことがあって、それも好みで面白かったので道尾作品の中では結構好きなシリーズ。今回4篇収録されていて、どれも箕氷市という架空の都市を舞台にしたもの。
 
「明神の滝に祈ってはいけない」
高校生の桃花には、1年前に行方不明になった1つ違いの姉がいた。ある日姉の裏アカウントを発見した桃花は、その内容から姉はあの日願いがなんでも叶うという明神の滝へ行ったのではないかと考えるが…。
避難小屋の管理人の章が不気味で、何らかを知っているのだろうな、ということだけは分かるが…。桃花のヒリヒリする行動力といい、終始スリリング。結構えぐい。残念ながらラストの写真の意味が分からなかったので検索。
 
「首なし男を助けてはいけない」
真たち小学生4人で肝試しを計画。しかしいつも威張っているタニユウに「首なし男」のドッキリを仕掛けようと、真は引きこもりの伯父の家を訪ねる。伯父は訳あって30年間引きこもり生活を続けており、口が利けない。そして自分の部屋に自作の「首吊り男」の人形を飾っていて。。。
ホラー風味の怖いお話なのだが、伯父と真との交流の話としても面白く読めた。最後の写真が一見して「うわっ」と声が出そうになる衝撃。
 
「その映像を調べてはいけない」
暴力で両親を支配していた男を、ついに父親が殺してしまう。警察に自首をしてきた父親は正直に事件の詳細を話しているかに見えるが。。。
今はドライブレコーダーが普及しているから、犯罪が露見しやすいのかも。それを逆手に取った今回の犯行。全ての真相が明らかになったわけではなさそう。ラストの写真はまあ、普通。
 
「祈りの声を繋いではいけない」
今まで出てきた登場人物がかわるがわるその「祈り」を叶えていく。今までのお話で説明不足だったところや不明だった部分が明らかになり、全て意味あるものへと繋がっていく。見事。
 
以上。
全ての作品で「写真」が効果的だったとは思わないが、その仕掛けがなかったとしても充分優れた作品だったと思う。前作よりホラー度が上がっていてより好みに。話題性という意味ではこの体験型スタイルは効果的だろう。写真として優秀だったのは1篇目だったと思うが(分からなかったくせに)、好みは2篇目。これぐらい文章力のある作家さんじゃないと成立しないかもね、自信の現れかも。第3弾も希望。表紙はイエローでね。