すべてが猫になる

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彼は彼女の顔が見えない/Rock Paper Scissors  (ねこ4匹)

アリス・フィーニー著。越智睦訳。創元推理文庫

夫婦関係が行き詰っていたアダムとアメリアの夫婦。そんなふたりに、くじでスコットランド旅行が当たる。ふたりきりで滞在することになったのは、改築された古いチャペル。彼らは分かっている。この旅行が自分たちの関係を救うか、あるいはとどめの一撃になると。猛吹雪によって外界と隔絶するふたり。そこに奇妙な出来事が続発し――。だれが何を狙っているのか? 『彼と彼女の衝撃の瞬間』を超える、今年最高の衝撃が待つ傑作!(紹介文引用)
 
アリス・フィーニー二冊目。前作「彼と彼女の衝撃の瞬間」が良かったので、こちらも。タイトルは似ているけれど繋がりはなく、別の登場人物の別のお話。
 
顔を合わせばケンカばかりの夫婦、アダムとアメリアは関係を修復するためスコットランドの山奥にあるチャペルに滞在することになった。周りは人の気配がなく、猛吹雪の中、奇妙な出来事が頻発する。誰かが何かを仕掛けているのか?
 
アダムの章とアメリアの章が交互に繰り返され、アメリアが結婚記念日ごとにアダムに宛てた手紙が挿入される。中盤より、チャペル近くに住む謎の中年女性ロビンの章が追加され、ロビンが何かを企んでいることだけが読者に示される状態。アダムとアメリアの章や手紙にも何か仕掛けがあるのに違いないので慎重に読み進めるが、もちろん分からない(笑)。そもそもアダムが相貌失認を抱えているので、ここに何らかの引っ掛けがあるはずだが…。3人とも性格にクセが強く、何を抱えていてもおかしくない感じなんだよね。。ロビンとアダムの関係は?脚本家アダムと大物作家ヘンリーとのいびつな関係もあやしい。
 
この作家の特色なのか、終盤に怒涛のタネ明かし。3人きりの登場人物でここまで引き込めるのも凄いが、こういうものにありがちな「時系列の誤認」「語り手の誤認」、想像の範囲内でどこまでパズルを並べ替えるのか、そういう楽しみを味わった。ラストはもう分かっていることを他の人物が理解する感じなので蛇足かな?と思うけれど、まあこれがあるから最後のあの人たちの未来が不穏に見えるわけで。
 
とにかくまた面白かった。この系統で、どれだけパターン違いを出してくれるのか今後も楽しみにしたいところ。