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死刑にいたる病  (ねこ4匹)

櫛木理宇著。ハヤカワ文庫。

鬱屈した日々を送る大学生、筧井雅也(かけいまさや)に届いた一通の手紙。それは稀代の連続殺人鬼・榛村大和(はいむらやまと)からのものだった。「罪は認めるが、最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」地域で人気のあるパン屋の元店主にして、自分のよき理解者であった大和に頼まれ、事件の再調査を始めた雅也。その人生に潜む負の連鎖を知るうち、雅也はなぜか大和に魅せられていき……一つ一つの選択が明らかにしていく残酷な真実とは。 『チェインドッグ』を改題・文庫化。(裏表紙引用)
 
初読み作家さん。阿部サダヲ主演で映画化されたので知った作品。櫛木さんも気になっていた作家さんなので旬かなと思って読んでみた。
 
10代の少年少女を攫っては拷問し殺害していた連続殺人犯(死刑囚)、榛村から1人の大学生のもとに手紙が届いた。筧井雅也は将来を有望視されていた<元・優等生>で、現在は挫折し鬱屈した日々を過ごしている。何の接点も能力もない自分になぜ死刑囚から手紙が?榛村からの手紙は、自分の犯行の9件のうち1件は冤罪だと主張しているが――。
 
主人公雅也の性格はネガティブで自意識過剰、典型的な「覇気のない若者」なので最初は読んでいてイライラする。こういう人って、せっかく自分をすくい上げてくれようとしている存在に気づかないんだよね。まあそんなイライラも中盤まで。雅也は榛村ゆかりの人びとに取材を続けていくうちにすっかり逞しくなってしまうのだから。おお、良かったじゃんと思ったはいいけど、これってよく読んだら榛村に取り込まれてるだけなんだよね~~~~。それを見抜いた灯里はすごいと思う。誰もが見惚れる美少年で、田舎では容姿端麗愛想抜群で男にも女にもモテモテだったという榛村。多くの人が彼に好かれたい、彼にハマりたいと夢中になったというエピソードは決して理解できない世界ではないと思う。ワルなんだけど人を惹きつける人っているもんね。ここまでじゃないにしても。
 
結局榛村の不気味さ得体の知れなさはいつまでも払拭されなかったので、こういう真相だったことは自然と腑に落ちた。こういう生まれついてのサイコパス(生育環境がそうさせたという意見もあり、それは否定しないけどサイコの素養はあったのでは)って人をコントロールするのがうまいんだな。自分も気をつけないと。
 
というわけで期待以上に面白かった。他の作品も面白いのかな?試してみたい。