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任侠浴場  (ねこ4匹)

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今野敏著。中央公論新社

「おう、アニキいるかい」ある日、事務所の外から前触れなく聞こえた不穏な声。日村が扉を開けると、案の定、そこには組長の阿岐本と兄弟分の盃を交わした永神の姿が。永神は阿岐本に潰れかけた銭湯の再建話を持ち込むが……。 お待たせしました! お馴染み「任侠」シリーズ第4弾!(紹介文引用)
 
任侠シリーズ第4弾。
「任侠シネマ」が出たのを知って早速予約したら、その前作である本書を読んでいないことが判明した。。シネマを借りたが返却しこちらを借り直しました。。最近こういうのホント多い。。
 
さて今回の阿岐本組は、日村のオジキである永神の頼みで赤坂の銭湯「檜湯」を再建することになった。ヤクザとして大っぴらに関わるわけにはいかないので、あくまでコンサルタントという形で。水道代タダ、優遇措置、補助金。普通にやっていれば大儲けはしないものの潰れはしないのに、なぜ依頼してきたのか?
 
水道代うんぬんもビックリしたけど、昔は女湯にも男性の「背中流し役」がいたっていうのにビックリしたなあ。番台が廃れるのは仕方ないにしても。ところでウチの近所には銭湯が結構ある。一番近い銭湯はすごく流行っていて、いつでも駐輪場はいっぱい。別にお家にお風呂がないんじゃなくて、部活帰りの男子高校生とか、ちっさい子ども連れたお父さんとか、色んな人が通ってるっぽい。その銭湯の何がそんなにいいのかな?と思って気になってます。なので、なんだかんだ廃れないと思うなあ、銭湯。
 
阿岐本組、はじめての温泉旅行の巻~。ゆっくりしろと言われてほっとかれる日村がとにかく笑える。。何かしようと思っても、俺は本当に城を見たいのか?俺は今お腹がすいているのか?と自問しなければ動けなくなっている自分に気づく。いつも阿岐本に合わせて生きているから。部屋で寛ごうとしても仕事のことばかり考えたり、美味しい手の込んだ料理をありがたいと思わなかったり。そのほうが日村の性には合っているんだろうね。そんな日村が温泉の持つ力に気づけて良かった。モンモン入ってても入れる温泉があるんだね、知らなかった。禁止されてないなら堂々と入れば?って思うけど。組長に気を使って、一般人に気を使って、ゆっくりできるもんかい?今回は暴対法や排除条例がいかにヤクザを追い込んでいるかという点もかなり興味深い。
 
まあそんなこんなで、檜湯が抱えていた問題を解決した阿岐本はすごい。すごく普通の、まっとうなことしか言っていないんだよねえ。家族との話し合いとか掃除とか。富士山の絵なんかも外国人に喜ばれると思う。展開は超絶ベタだけど、情があって日本の心があってほっこりする。面白かった!