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素敵な日本人  (ねこ3.9匹)

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東野圭吾著。光文社文庫

一人娘の結婚を案じる父に、娘は雛人形を指差して大丈夫という。そこには亡き妻の秘密が……。(「今夜は一人で雛祭り」)独身女性のエリーが疑似子育て体験用赤ちゃんロボットを借りたところ……。(「レンタルベビー」)世にも珍しい青色の猫。多くの人間が繁殖を目論むが……。(「サファイアの奇跡」)日本人に馴染み深い四季折々の行事を題材にした4編と、異色のミステリ5編を収録!(裏表紙引用)
 
東野さんの最新短編集。表紙の「短編集」の主張すごいな。
ノンシリーズで、9編の短編を収録。
 
「正月の決意」
初詣に参じた夫婦が神社に倒れていた下着姿の町長を発見した。町長は後頭部を殴られていたが、夫婦は逃げる人物の姿を見ていなかった――。いい加減だなあ、警察。コミカルな作風であるが、事件の真相よりも夫婦の秘密のほうにビックリした。いい加減でも役に立つこともある。
 
「十年目のバレンタインデー」
十年ぶりに別れた彼女から呼び出された男。舞台となったフレンチレストランで、彼女から打ち明けられた話は――。作家の〇〇ネタってよく見るやつ。彼女の思惑と正体にナルホドと思ったが、10年もよく気持ちが持ったなあという気持ちのほうが強かった。そもそも、こんなネタによく付き合ってくれたなと。ちょっと非現実的かな。
 
「今夜は一人で雛祭り」
妻を病気で失った男の大事な一人娘が大病院の息子と結婚することになった。厳しい姑の姿を見て自分の妻の苦労と重ね合わせ、娘を心配する男だが――。雛祭りの歌にそんなに間違いがあったとは知らなかった。妻がやっていたことを知ってもあんまりスカっとはしないな。意地悪な姑と同居ってストレスはストレスでしょ。娘も大変そうだと思うけど、まあ、いつかは先にいなくなるからね。
 
「君の瞳に乾杯」
なんちゅうタイトルだ、と思っていたら一応ストーリーに深く関係があった。合コンで同じアニメオタクの女性といい感じになった男の顛末と正体。「十年目の~」とちょっとかぶるかな。
 
「レンタルベビー」
ロボットベビーで子育ての疑似体験という商売。遠い未来ホントにあるかもね。子育てで重要なのは夫がどんな人か次第なんだろうな。男性が読んだほうがいい話だと思って読んでいたが、オチでひっくり返された感。
 
「壊れた時計」
男が闇サイトで得た、タワマンの一室から彫刻のケースを盗むという仕事。うっかり住人と鉢合わせした男は、住人を殺してしまう――。いやいやいや、時計そのままにしとけよ。。そしてなぜ修理する。と、ツッコミどころの山みたいな男だが、修理に出した動機のほうが面白さのキモだろうな。
 
サファイアの奇跡」
世にも珍しい青い毛の猫に同じ遺伝子の子猫を産ませようとするビジネス。17匹目を産ませると飼い主は必ず死ぬというが――。心の優しい少女と猫との出会い、再会。ほっこりするお話かと思ったが…ちょっと猫好きとしては抵抗のある展開だった。
 
「クリスマスミステリ」
売れっ子俳優が交際中の女流脚本家を殺害。アリバイ作りに余念のなかった俳優だが、パーティー会場に現れた女を見て愕然とする。あんなに凝ったのに。。これは自業自得感もあるが、警察はこれ信じて欲しいなあ。さすがにかわいそう。
 
「水晶の数珠」
勘当された地方都市の名家の長男は、跡を継がずハリウッド俳優を目指しアメリカへ渡った。それから七年後、実の出ないまま父の余命がわずかだと知り日本へ一旦帰国する。家に伝わる数珠の力って出てきてからオイオイ大丈夫かと思ったが、思わぬホロリ人情話に。泣けたわー。
 
以上。
どれも水準以上の面白さだったと思う。作風は軽めだが、どの作品も展開が読めない。どれも特にガッカリさせられたということもなかった。特に好きなのは「レンタルベビー」「壊れた時計」「クリスマスミステリ」「水晶の数珠」。「水晶~」は人気が高いと思う。