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テンペスタ 最後の七日間  (ねこ3.7匹)

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深水黎一郎著。幻冬舎文庫。 

東京で美術の非常勤講師を務める賢一は、田舎に住む弟の依頼で一人娘を一週間預かることに。駅で待っていたのは、小学四年生の美少女・ミドリ。毒舌全開、自由奔放なミドリに圧倒されながらも刺激を受ける賢一。徐々に距離を縮める二人に、刻々と予想外の出来事が忍びより――。二人の掛け合いと怒濤の展開に目が離せない一気読みミステリー。(裏表紙引用)
 
大学の非常勤講師をしている賢一が弟の頼みで姪を1週間預かることになり、姪の傍若無人ぶりに翻弄されるもだんだん情が移っていく、というお話。
 
――という結構ありふれた題材なので安心して読んでいたが、姪のミドリがなんともまあ凄い。ああ言えばこう言う口の達者さはもとより、毒舌、奔放、めちゃくちゃ。小4の人生の目標が酔生夢死ってどんだけ(笑)。28000円のカバンを買ってもらうために大声で賢一を誘拐犯だ虐待だと騒ぐなんてものは序の口。正義感は強いから間違った大人に堂々と注意するなんてこともしちゃうミドリ。引率者としては爆弾抱えて歩いてるみたいなもんだよなあ。でも、買ってもらったカバンは大事にするし、いいもの食べさせたら本当に美味しそうに食べる。可愛いっちゃ可愛いかも。言葉が汚いのはどうかと思うけど、いきなり長老が乗り移ったり刑事になったりするところは面白かったな。憎めない感じ。ところで、賢一がずっと「兄ちゃん」って呼ばれるの嫌がって「伯父さんと呼べ」と怒ってたけど、普通そうなのかなあ?私も兄も叔父のこと名前で読んでるし義叔母のことは「姉ちゃん」って呼んでるんだが。旦那も自分の伯父たちのこと名前にちゃん付けしてるし。まあ親密度によるんだろうが皆さんはどうですか。
 
そしてラスト、深水さんらしく事態は大きく変化。かなり衝撃だったけど、理想的な選択をしてくれてホっとした。世の中お金や教育は大事だが、ああいう環境で暮らすほうが精神的に良くないと思うわ。他人であろうと一緒に暮らして自分の存在をなくてはならないものだと思ってくれる人が1人でもいる人って強いよ。
 
ただ、これ作品批判とは違うんだけど、現代なのに雰囲気が平成初期の日本みたいな感じなんだよね。電車に乗ってる女性ブランドバッグ皆持ってるとか、街頭で風俗求人のティッシュ配りまくってるとか(東京はそうなのかい?)。他にも色々違和感あるけど、深水さんの知識が20年前で止まっているような、世間ズレしてるのかなって感じの描写が結構多かったりする。子どもを1週間預けるのに母親からの挨拶が一度もなかったり。まあ真相がアレだったからそういう人なのかな。その代わり、美術や語学の知識がやたらつくからありがたくてトントンかな。