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犯人IAのインテリジェンス・アンプリファー 探偵AI 2 (ねこ4.2匹)

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早坂吝著。新潮文庫nex

人工知能探偵・相以の驚異的な推理力に大敗を喫した以相。復讐に燃える彼女は、人間の知能を増幅させ完璧な共犯者を造り、相以に挑戦状を叩きつけた。ゴムボートで漂着した死体、密室で殺された漁協長、首相公邸内殺人事件。連鎖する不可解な事象を読み解く一筋の推理の紐は、なんと以相の仕掛けた恐るべきトリックの導火線だった!?奇想とロジックが宙を舞う超絶推理バトル再燃。(裏表紙引用)
 
探偵AIシリーズ待望の続編、わーい。前作の設定、展開をそのまま引き継いでいるので記憶を呼び起こしながら。話が込み入っている上にかーなーりーややこしく複雑な推理なので、メモを取りながら読んだ。相以の推理は結論を先に言って詳細は後回しにすることが多いので、サラっと読んでたら分からなくなると思う、これ。
 
今回は人工知能の以相が相以に真っ向から勝負を挑む。前回も登場した右龍が実は三つ子であり、母親は女性初の首相だということが判明。対馬で発見されたゴムボートに乗せられた射殺体事件と、壱岐で発生した漁協組合長撲殺密室事件がどう絡むのか。以相は自分が「右龍」と協力して三人を殺すと予告。さらにオクタコア関係者や謎の人工知能の存在が関わって…。「右龍」とは誰を指すのか?凶器がナイフじゃなかったのはなぜ?壱岐でばらまかれたウォンの意味は?トロッコ問題はどうなる?謎だらけでワクワクするね。
 
国際問題に発展するもしないも展開次第なのだが、この作品は早坂さんの新規開拓と言ってもいいかもしれない。三つ子という推理小説界ではタブーの多い難題に挑戦しつつ、人工知能同士のバトルを乖離させず、さらには恋愛ゴトやマザコン要素までもが全て密接に絡み合ってくるのがさすがだなあ。ゴムボート事件のトリックはさすがにバカミスすれすれかもしれないが、世界観がかなり壮大なのでこれならば通用するかと。行政の息子が親に似ていない理由にビックリ。三つ子の職業も全て事件に生きているし、それぞれの性格によってどう行動するかっていう微妙なところさえもロジックでねじ伏せている感じ。できれば最後の、以相の計画も相以に推理して欲しかったけど。
 
それにしてもあの首相、人格にかなり難があるね。こういう人物の元に生まれてしまったことが不幸としか言いようがない。