すべてが猫になる

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裁く眼  (ねこ3.7匹)

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我孫子武丸著。文春文庫。 

漫画家になりそこね、路上で似顔絵を描いて生計をたてていた鉄雄。ある日テレビ局からの急な依頼を受け、連続殺人事件裁判の「法廷画」を描くことに。注文通り仕上げた絵が無事に放送された直後、何者かに襲われて怪我を負う。鉄雄の絵には一体なにが描かれていたのだろうか?予測不能、驚愕の法廷サスペンス。(裏表紙引用)
 
我孫子さんの文庫新刊。
 
あらすじ、設定を読んでこれは絶対面白いと予想したらその通り、なかなか良かったのでは。法廷画家というものがいるのは知っていたが、その職業にスポットを当てたものを読んだことがなかったので新鮮だった。鉄雄は普通に見たら漫画家になりそこねたフラフラしてる30代の男って感じなんだけど、絵がすごくうまいらしい。文章でもその凄さは伝わってきた。そんなに能力があっても漫画家で食っていけないなんて厳しい世界だなあ。まあ、漫画となると絵だけの問題じゃないんだろうけどさ。それを活かせる仕事がもらえて良かった気がする。ピンチヒッターという形なんだろうけど、これを機に色々仕事が入ってくるんじゃないかな。そんな甘くないのかな。
 
鉄雄が自宅前で殺されかけたり、法廷画家の女の子が殺されたりとミステリー的にも謎が多くてハラハラしたなー。まさかあの人が犯人とは。そして、鉄雄の絵の謎のほうにビックリしたなあ。ちょっと不満といえば、稀代の殺人鬼と呼ばれる佐藤美里亜の事件が一体どうなるのかってところ。そこがメインではないのだけど、これ、私、ヤってると思うなあ^^;鉄雄が美人ってだけの理由で無実を信じたり、パっとしない容姿の女の子にはキツいことを言ったりするところは「あー、はいはい、女慣れしてないのね」って感じだったな。現実だと容姿の良くない女性がそういう事件を起こしていたりして、「美人だと騙されてるのでは、って疑ってしまうから逆にそうじゃない人のほうがうまくいくんだなあ」って思ってたけど、そうとも限らないのかもねえ。世の中にはなぜ騙される?!って思ってしまうような、分かりやすい詐欺に引っかかる人いるもんなあ。。信じられないけど、芸能人の名を騙った迷惑メールに引っかかる人いるんだもんね。(ウチはよくキムタクと土屋太鳳ちゃんから来る)
 
でも姪っ子の蘭花ちゃんが純粋で鉄雄想いで良かったなー。この子がいるといないのとでは作品の印象がガラっと変わると思う。シリーズ化とかしないだろうけど、我孫子さんにはこういうのをまた描いていただきたい。