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ビブリア古書堂の事件手帖5 ~栞子さんと繋がりの時~ (ねこ4匹)

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三上延著。メディアワークス文庫

静かにあたためてきた想い。無骨な青年店員の告白は美しき女店主との関係に波紋を投じる。彼女の答えは―今はただ待ってほしい、だった。ぎこちない二人を結びつけたのは、またしても古書だった。謎めいたいわくに秘められていたのは、過去と今、人と人、思わぬ繋がり。脆いようで強固な人の想いに触れ、何かが変わる気がした。だが、それを試すかのように、彼女の母が現れる。邂逅は必然―彼女は母を待っていたのか?すべての答えの出る時が迫っていた。(裏表紙引用)
 
シリーズ第5弾~。進展したぞふおおお。
今回は短編3編と、プロローグ&エピローグ&断章の挿入という形で構成。これがまたうまいんだ。
 
「第一話 『彷書月刊』(弘隆社・彷徨舎)」
古書界で噂になっている彷書月刊のバックナンバーをほうぼうで売ったり買い戻したりしている年配女性がビブリア古書堂にも現れた。どうやら志田と関係があるようだが…。ビブリアにしては普通の謎解きだなと思っていたら、断章でひっくり返された。過去の過ちがあまりにも大きすぎると、簡単に「人はやり直せる」とは言いづらいな。本人だけの問題じゃないしね。でも全ての人間関係っていうのはうまくいって欲しい。
 
手塚治虫コレクターの男性の妻が死去。滝野の友人から依頼されたのは、友人の弟が「ブラック・ジャック」の貴重な四巻を盗んだというものだった…。手塚治虫に人気の低迷していた時代があったとは知らなかった。実は私、手塚治虫だけは何を読んでもあまり合わなかった。(「火の鳥 未来編」以外)しかし「ブラック・ジャック」だけはドハマリして文庫を揃えたし、漫画をほとんど読まない旦那も「ブラック・ジャック
だけは実家の屋根裏に大事に保管している。なので、「ブラック・ジャック」でファン層が広がって人気が再燃したというのには納得できたなあ。
さておき、弟の誤解が招いた、夫婦の絆に泣けた。ある意味こういうことがあって良かったんじゃないかな。。老婦人の「あの時、どうして本棚を買ってあげなかったのか」という台詞が心に残った。
 
「第三話 寺山修司『われに五月を』(作品社)」
栞子さんが一昨年出禁にした客が、栞子さんの家に現れた。それは寺山修司コレクターの兄から盗んだ寺山修司の貴重な本をビブリアに売った男だった。しかし男は、その本は兄から譲られたものだと言い張るのだが…。
この弟はどうしようもない人だし好きではないが、本は読むためにある、形見でも関心がない人が持つぐらいなら読んでくれるファンの人に渡したいという考えには少し同調できる。大事なのは傍にいる人との関係で、有名作家の直筆原稿よりそれが優先されないなんてことはあってはいけないと思う。これが出来てないのが栞子さんの母親なんだけど^^;
 
以上。
 
各短編のレベルが高く楽しめたが、今回の見所はやはり五浦さんの告白がどうなったか、そして栞子さんの母親と栞子さんの関係の進展(と言っていいのかどうか)だろう。いやあ、こういうことになるとは。。感無量だなあ。まだまだ色々波風立ちそうだけど。栞子さんは母親に多少の情があるし、迷いがあるんだなあ。でもこういうことになったからには、断ち切ってもいいのではと。自分も母親と同じになるかもしれないと言う栞子さんに対して五浦さんがあそこまで言ってくれたのだから。それでもダメなら母親と同類になっちゃうよね。