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デブを捨てに  (ねこ4.2匹)

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 平山夢明著。文春文庫。

“うで”と“デブ”どっちがいい?借金で、首の回らなくなった「俺」の究極の選択とは?予測不能の展開の表題作をはじめ、“泥沼”で咲きみだれる美しい“花”や、極限状況に置かれた底辺の人間の悲哀と希望の光を、リズミカルな文体と、ぶっとんだユーモアでお届けする“イエロートラッシュ”シリーズ全四編。(裏表紙引用)
 
二ヶ月連続刊行第一弾らしい。というか、コレと次に出る「ヤギより上~」、自分読んでると思ってた。。うっかりさん。
 
「いんちき小僧」
失業者の「おれ」が公園で出会ったホームレス親子と偽モノの麻薬を売ることになったのだが……まあ、どうなるかわかるよね^^;拷問と絶望まみれの安定の平山世界。大人は自業自得な面もあるけど、少年はなあ…。悲しいわ。
 
「マミーボコボコ」
日雇い労働者のカモやんが現場の「おっさん」が35年ぶりだという娘との再会に同行することになったが、そこにはテレビ局の撮影隊が待ち受けていた。聞くと娘夫婦には七男五女の子どもがいて……。もう底辺中の底辺を描いた作品。全員キラキラネームどころじゃないし。夫も異常だしなあ。おかしすぎる家族でも、おっさんの献身に泣ける。
 
「顔が不自由で素敵な売女」
へるす叙々苑で、ハラミという源氏名で働く女性と知り合った日雇いの男。男が働く呑み屋「でべそ」では店主のマンキューに会いに来るおかしな男に悩まされていた。。もうネーミングだけで話が落ちてるような感覚だが、話はわりかしシビア。男の気持ちもわからんでもない、が…実際気持ちのいいもんじゃない。
 
「デブを捨てに」
まさか女性がそのデブ(すいませんね、こう書いてあるもんで統一しますよ)だったとは。。自分が捨てられるというのに従順。ちょっとイライラするところもあるけど、憎めないデブだなあ。最後ヒーローになったし。デブは出生がめちゃめちゃで、男は人生を誤って、お互い通じるものがあったのかなあ。結構いい話だった。
 
 
以上。
一篇目はちょっと方向が違うかも。基本的に平山愛熱い名作ぞろいだった。「マミー~」はカモやんのおっさんに対する思慕だし、「顔が不自由~」はマンキューとハラミに対する男の情愛だし、「デブ~」はそのままデブへの想いだし。どういう表現をしようとも人間を描くというのはこういうことなのだな。平山さんにしてはグロ控えめだけど。