すべてが猫になる

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いけない  (ねこ4.2匹)

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道尾秀介著。文藝春秋

騙されては、いけない。けれど絶対、あなたも騙される。 『向日葵の咲かない夏』の原点に回帰しつつ、驚愕度・完成度を大幅更新する衝撃のミステリー!どの章にも、最後の1ページを捲ると物語ががらりと変貌するトリックが……! ラストページの後に再読すると物語に隠された〝本当の真相〟が浮かび上がる超絶技巧。 終章「街の平和を信じてはいけない」を読み終えると、これまでの物語すべてがが絡み合い、さらなる〝真実〟に辿り着く大仕掛けが待ち受ける。 「ここ分かった!?」と読み終えたら感想戦したくなること必至の、体験型ミステリー小説。 ラスト1ページが暴き出すもうひとつの“真相”をあなたは見抜けるか? (紹介文引用)
 
ミッチー新刊。
 
いやあ、なんか疲れた。凄かった。4章から成る物語なのだけど、それぞれが「写真」「イラスト」で終わるという試み。そのラスト1ページを見ると、物語に隠された仕掛けが分かるというもので、これと同じものがソブケンにもあったな。「動かぬ証拠」だっけ。でもどれもパッと見て「ああ、そうか!」って分かるとは限らなくて、「え、え、どういうこと?」ってもう一度考え直さなきゃいけないものもある。
 
「弓投げの崖を見てはいけない」
自殺の名所・弓投げの崖が一望出来る白蝦蟇シーラインで、若者3人の乗る車が原因で事故を起こした邦夫。若者たちは証拠を隠滅し、邦夫に暴行したのちその場を去ったが…。これは騙された。登場人物が賢くない連中だったから見事に誘導された感。伏線あったのになあ。と、衝撃のシーンで終わったと思ったら最後の1ページで自分の勘違いが分かるという仕掛け。
 
「その話を聞かせてはいけない」
今思うとこのタイトルにすごく意味があったことが分かる。中国からやってきた少年・珂は、自分のフルネームが日本語で発音すると「バカ」になるという理由でイジメを受けるようになった。ある日珂が万引き目的で入った文具店で、殺人現場らしきものを目撃するのだが…。現れる白い幽霊のようなものに引っ張られていると事件の本質を見失ってしまうかも。緊迫のラストが待ち受けるが、最終ページの写真に写りこんでいたものを見るとショックが大きいかも。
 
「絵の謎に気づいてはいけない」
第一話で出てきた宗教団体の幹部が自宅の玄関ドアで首を吊って死んでいるのが発見される。容疑者はすぐに浮かんだが、新たな被害者が…。
竹梨、水元の二人の刑事の動向と、管理人、容疑者の言動を繋ぎ合わせれば隠された真実が浮き彫りに。唯一、ラストの写真を見てすぐに答えがわかった作品。作中のイラストをもう一度見直すといいと思う。
 
「街の平和を信じてはいけない」
二話で登場した珂と山内が再登場。刑事とある人物も登場し、それぞれの胸の内を明かす。この作品、全てが分かってから読むと裏に漂う不穏さを感じてしまってゾっとする。いい話風になっているから余計に。
 
以上。実は、写真を見ても分かったのか分かっていないのか、という微妙なラインのものもあるので以下ネタバレで自分の解釈を。
 
 
 
 
 
・弓投げの崖~で最後に車に撥ねられたのは隈島? 地図で足取りを辿るとそうなる。
・その話を~で最後二人を突き落としたのは山内? 山内がおばあさんの親戚だという説も見たが、単純に山内が車の中に隠れた瞬間の画像ではないかと。画像を見る限り二人には気づかれていないので。だから助けることが出来たのでは。根拠は、トレーナーの「H」(HAPPY)。
・絵の謎~ 犯人は守谷。竹梨は十王還命会の会員。宮下が隈島を撥ねたときスピードを出していたことを警察に打ち明けようとしていたため殺された。中川は脅迫したため殺された。竹梨は虚偽の報告をしたため宮下の存在はまずい。水元は竹梨が突き落としたとすれば辻褄が合う。ラストの写真は、スマートロックのトリックが書かれていたのをごまかすため上から竹梨が書き足したところ。
・告白文が白紙だったのは、奥さんの温情かなと。代筆している時に音読させられている&書く音をさせているのは別の紙に書いて破棄したのかな、と。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
以上。どうだろうか。。読む人によって解釈は違うかもしれないけど、自分はこれでスッキリするかなー。覚えている時に再読するべきなんだろうけどね。