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狼と兎のゲーム  (ねこ3匹)

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我孫子武丸著。講談社文庫。

智樹のクラスメイトの心澄望は、警察官の父親から暴力を振るわれて傷が絶えない。夏休みのある日、勤務中の父親のパソコンを壊してしまったと怯える心澄望と智樹がこっそりと家に戻ると、弟の甲斐亜の死体を始末している父親の姿が。慌てて家を飛び出した二人は、迫り来る怪物から逃げ切ることができるか? (裏表紙引用)
 
う、ううん…不愉快(笑)。
 
平凡な小学生・智樹には心澄望という乱暴で嫌われ者の友人がいる。心澄望の家は父子家庭で、日常的に暴力を振るわれていた。二人はある日心澄望の家で、心澄望の弟の遺体を庭に埋めようとしている父親を目撃。激昂した父親からの逃亡劇が始まった。
 
主人公が小学生なので、やれることに制限はあるしワガママすぎる心澄望が本人の問題なのにかなり足を引っ張っている。父親がサイコパスと言ってもいいほど異常なので心澄望も気の毒ではあるが、コイツのためにそこまでしなくても、警察に言えよとイライラしなくもない。心澄望もこういう親に育てられてはこうなっても仕方がなく、ある意味被害者とも言えるが…。警察や児相、教師が頼りにならないと子どもにさえ思われてしまうのはやはり問題だ。
 
だがしかし子ども二人で東京にまで逃げ、あらゆるところで犯罪を重ねながら追いかけてくる父親という構図にはやはり終始ハラハラした。この父親、警察官なんだもんね。助けてもらえる人に見捨てられたりその人が父親の毒牙にかかったりと、もう子どもの無力さに涙が出てくる。。
 
父親に鉄槌を、子どもたちに救いをと願いながら読んでいた身としては、このいきなりの結末には少し割り切れないものを感じる。仕掛けもありそこは驚けるが、被害者が救いのないままだったりと腑に落ちない点が多い。読ませる内容なのは間違いないのだが、ちょっと浅いかなあ。我孫子作品なら期待しちゃうからね。